会場の空間構成についてー黒川雅之
茶の空間は持て成しにあるという、亭主と客との関係のなかでの、人と人との交流の場である。
客を迎え、飲食を供し、会話を交わし、見送る、その時間の流れを乗せる舞台のように構成され
ている。ここでは、手尾朱も客も劇の登場人物であり観客でもある。そして空間は、舞台として
現実から隔てられた儀式の場所のようで、同時に、濃縮された日常性の空間でもある。
今回のこの試みは、デザインの側からは、伝統への挑戦的な探検、茶道の側からは、日常性の
再発見と言えようし、又同時に、デザインの側からは、精神的なものの要求であり、茶道の側
からは 、茶道に再び肉体性を取り戻そうとする試みと言うことが出来る。
主会場は、それ自体、茶室のように、小宇宙でありたいと思う。それに、場当たりの感覚で、
ありきたりの素材で、間に合わせしつらえられ、日本建築のキーとなる概念である床だけで
構成される。
主会場は、床全面に、安価で、日常的で、レディメイドのラワン合板が、ありきたりの寸法、
畳の寸法でもある三尺六尺の寸法で、目的をとって貼り巡らされる。三五〇ミリの高さに嵩上げ
され、かつ、四周の壁との透き間に照明が仕組まれて、会場全体は空中に浮かぶ巨大なステージ
のようになり、六つの茶室はそこに象嵌されている。
会場はそれ自体大きな茶室であり、五人の作家による六つの亭を持つ一つの庵となった。
