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平成14年12月18日。

大阪国際大学の高橋尚美先生の授業も年末になると大詰めです。
今までの成果を学生達が「日本文化を英語で開示する研究発表会」で披露するのです。

その模様を「和の学校」が取材致しました。

■日本人は英語で、留学生は日本語で
今回は2クラス、合計19名の学生の発表を拝見しました。その中に中国人留学生が5名。
日本人は英語で、留学生は日本語で、それぞれ自分が興味をもった日本文化を研究し発表します。

留学生にとっては、日本語が外国語です。そのため日本人が英語で発表するのと同じ苦労と努力を要します。

高橋先生の授業は日本人でも”面白いけど大変”と言われ、英語を母国語としない留学生たちの間では、英語力と日本語力の両方が必要なため、ついていくのが難しいと言われているそうです。
実際に、途中で履修を諦める学生もいるとのこと。
しかし、今回研究発表する中国人留学生たちは日本の文化が大好きで、日本人顔負けの勉強をしている学生だとのことです。

■この授業の必要性
高橋先生は言います。「現在の日本の教育では、特に語学の習得が重要視されていますが、留学して帰ってきた学生の話を聞くと、外国語でなんとか言いたいことは言えても、外国の人とコミュニケーションする中で"日本はどんな文化があるの?""茶道ってどんなもの?""着物ってどんな風に着るの?"とどんどん質問をぶつけられて、それに、たったひとつも答えられずに帰ってきた、という現状があります。
ですから日本の文化を学んで、そして語学も磨いてほしい、そんな私の思いと大学の思いが一致した授業なんです。」

■研究発表とは
今日のこの「研究発表」について高橋先生に概要を説明してもらいました。
「自分が気に入った日本の文化を英語で説明してみようということを課題にしています。
一年の最後の目標と定義づけています。前期試験と後期試験、それに毎回授業で行う小テスト、提出したレポートなどを総合評価して成績をつけますが、この研究発表は私の授業では"後期試験"にあたります。
今まで授業で勉強してきたものの中から、あるいはそれ以外からでも、何かひとつ自分の好きなものを見つけてほしいと思っています。
それが最初の一歩として踏み込むきっかけになると思うんです。

学生達は、最初、この発表を長いレポートを流暢な英語でスラスラと話さなければならないと思い描くようです。
でも、私は実際にコミュニケーションするとき、何も流暢なだけが相手に訴えるということではないと思います。
熱意、ぜひ伝えたいと言う意気込みこそが、大切だと思うんです。
英語自体は中学生位のものでも良いと言っています。語学のレベルの評価というのではなく、デモンストレーションとして、相手にいかに紹介できるか、話題を広げることができるか、ということが大切だと最初から言い続けています。 」

着物にセーターの高橋先生
■こんなのもアリかな
高橋先生の今日の装いは、和服の上からセーターを着たもの。しかもカーディガンではなく、頭からスポッとかぶるタイプ。普通着物では考えられません・・・。

授業の始まる前に、学生たちに「見てこれ。いいでしょ?」と言うと学生達からも「かわいい!」と歓声が。
「これね、私が受験勉強をしていたときに着ていたセーターなの。今日は寒いから、これ着てきたんだけど、着物にこんなのもアリかなってこと、みんなにも見てもらおうと思って。」と高橋先生。

今日はこのファッションで電車に乗って大学まで出勤されたのです。
先生のこんな行動やひとことが「日本文化ってカタクルシクないかも」と学生達に思わせるのではないか、と思った一コマでした。

■授業スタート
授業のはじまりは、きちんと挨拶をするところから。
和の学校の取材スタッフにも丁寧に「よろしくお願いいたします」とご挨拶いただきました。

最初に先生から年始に催される「百人一首大会」のお知らせ。
取った札の枚数は成績にプラスされるというお年玉付き!取れなかったからといってマイナスになるということはないそうです。そんな遊び心も学ぶ意欲につながるのかもしれません。


さあ、研究発表のスタートです。各自持ち時間は5分。発表のためにみんな、様々な準備をしてきています。




◆高橋尚美先生の思い◆
〜高橋先生の教育にかける熱い思いをぜひお読みください〜

〜 研究発表 〜
Oさん 英語で発表
   
テーマ

How to make sakura-mochi

  桜餅の作り方

和菓子の歴史と、和菓子は季節を表すものである、例えば、春は桜餅、夏は葛餅、秋は月見団子、冬は椿餅・・・、ということなどを写真を見せながら発表。

また、自分で「桜餅」を実際に作り、それを写真で撮影して、その作り方と魅力を発表しました。
Oさん 英語で発表
   
テーマ Japanese calligraphy
  書道

書道に使う道具(筆、半紙、文鎮、下敷きなど)の役割や素材の説明、書道の筆の運びである「とめ」「はね」「はらい」などを実際にホワイトボードに書いて説明。
最後に、筆の持ち方なども詳しく説明しながら、「とめ」「はね」「はらい」などの要素が入った「栄光」という字を書いて披露しました。
   
Nさん 英語で発表
   
テーマ Japanese traditional lacquer Wakasa-nuri
  若狭塗

若狭塗を説明。お母さんからもらった若狭塗の文箱(ふみばこ)を持ってきて、その美しさを、みんなにまわして見てもらいました。
また若狭塗の歴史や製作工程、素材などの説明もしました。
   
中国人留学生Sさん 日本語で発表
   
テーマ 端午の節供

端午(たんご)の節句は、中国の「屈原(くつげん)」という偉人の逸話に密接な関係があるという話や、その日に使われる菖蒲の花、蓬(よもぎ)について、また鯉のぼりや柏餅(かしわもち)についてなど、詳しく発表をしました。

端午の「端」は月の初めという意味があります。
菖蒲や蓬は魔除けの力があります・・など。
   
中国人留学生Dさん 日本語で発表
   
テーマ お茶

お茶の歴史と文化について。
日本人と茶の出会い、歴史、茶の種類、茶の成分、効能など詳しく発表しました。
   
中国人留学生Rさん 日本語で発表
   
テーマ 生け花

華道家元池坊の生け花を紹介。
生け花の歴史や、季節や見る人の心との「調和」が大切であると説明。

華道の「立花(りっか)」「生花(しょうか)」「自由花(じゆうか)」や「真(しん)」「副(そえ)」「体(たい)」などの種類や、それぞれの役枝の説明を発表。また実際に「菊一種生(きくいっしゅいけ)」を持ってきて、それぞれの部分を指してわかりやすく説明しました。

中国人留学生Rさん 日本語で発表
   
テーマ 兜の折紙


兜(かぶと)とは、の説明とその歴史や素材について説明。
頭を入れるところは「鉢」、背面に垂れて首を保護する部分を「しころ」と言うこと、鉢は鉄、しころは皮でできていた・・・と説明。
その後、 全員に新聞紙を配り 折紙の「兜」を一緒に実際に折り、「子供のときの楽しかったことを思い出して作りましょう」と言いみんなで作りました。

 
Kさん 英語で発表
   
テーマ Hina dolls
  雛人形

雛祭りの歴史、由来、人形の種類などを詳しく説明。

"Have you ever heard Hina Festival?
It originally came from Chana.
It came to Japan in Heian period.
I just pass around this picture.
This is Nagashibina."
   
Oさん 英語で発表
   
テーマ Chopsticks
 

アジアで箸を使う国はたくさんあるけれど、すべての料理を箸で食べるのは日本だけ、と説明。
また 箸のタブーについても発表。
自分の意見を入れながらの発表でした。

その中でも箸を通して「日本文化を学んでいるけれど、他の人を思いやることは世界共通だ」とまとめました。
   
Oさん 英語で発表
   
テーマ Junishi
  十二支


自分で書いた干支のイラスト入りの図をもとに発表。十二支の成り立ちと12年周期にめぐってくることを具体的に説明。

 

 
Kさん 英語で発表
   
テーマ Japanese traditional patterns
  日本の伝統文様


ホワイトボードに日本の文様を描き説明しました。
   
Kさん 英語で発表
   
テーマ Chopsticks
 

箸が木、竹、象牙・・などいろいろな素材で作られていることの説明。また箸のマナーでのタブーの紹介。もう一人出てきてもらって、二人で箸を使って、説明しました。
   

中国人留学生Sさん 日本語で発表
   
テーマ 演歌

日本に来てこの大学に入ったとき、日本語の講義がわからず、自分の思いも伝えられずに、悩んでいるときに天童よしみの「道頓堀人情(とんぼりにんじょう)」という歌を聞き励まされた、演歌のおかげで毎日を楽しく過ごせる、ふるさとを思い出す・・・と発表。カセットテープでその歌を流し、みんなで聞きました。
   
Oさん 英語で発表
   
テーマ Multipurpose wrapping cloth
  風呂敷

風呂敷の様々な包み方を紹介。ペットボトルを実際に包んだり、ショッピングバッグにする包み方を紹介。
   
Tさん 英語で発表
   
テーマ

Flower arrangement

  生け花


生け花に使われる、水盤や剣山を説明。
また実際に目の前で生け花をしました。

みんなから見える面を正面にして、裏側から上手に生けました。
   

社会人入試で入学されたNさん
英語で発表
   
テーマ Japanese battledore
  羽子板


お正月の遊びである「はねつき」の遊びの紹介。実際に羽根突きをして解説。
また遊びだけでなく羽子板を飾ることも紹介。自分で作った羽子板をみんなに披露しました。
   
Kさん 英語で発表
   
テーマ Japanese family crest
  家紋


家紋とは、の説明。
ルイヴィトンは日本の家紋をモチーフにした柄を使っていることを紹介。
植物、動物、星などから多くの家紋があることを説明しました。

   
Nさん 英語で発表
テーマ Japanese traditional clothes
  着物

日本の着物の歴史を紹介。
各時代の特色、柄の種類、衣装の変遷などを説明しました。
   
Nさん 英語で発表
テーマ History of Japanese confections
  和菓子の歴史

和菓子の歴史を説明しました。

ぼたもちを実際に作ってきて全員に配り、発表のあとみんなでいただきました。
高橋先生「誰か抹茶点てて〜!」



   



全員の発表を終えて、高橋先生からのお話です。

「調べて、まとめて、発表する・・・調べるだけでも大変やのに
みんな本当によくがんばったと思います。
今回、発表することで
文化や言語の違う人に伝えることの難しさや大切さを少しはわかってもらえたと思います。」

「今回の発表はもちろんプロの世界ですぐに通用するものではなかったかもしれません。
でも、今回がんばったことは絶対これからのみんなの学ぶ意欲につながると思うし自信につながると思います。」

「みんなの熱意と工夫が感じられる発表でした。私も感無量です。」

毎年この研究発表は力作が揃うとか。
先生に感想をお聞きしました。

よくやってくれたなぁと、思います。この発表のために準備をするというのはとても大変なことです。
また、人前で話すというのも彼女達にとってはとても大変なこと。しかも英語で。中国人の留学生にとっても日本語で発表することはとても大変なことです。それらをいっぺんにやらなければならない。すごい緊張感の中で。
やってきたことを何とか伝えたいとい
う、一人一人の思いは私には充分に伝わってきました。

こんな体験を、ぜひいっぱいしてほしいと思います。
しんどい思いをして、嬉しいとか楽しいという体験をしてほしいと思います。
学ぶこと、コツコツ調べることはしんどいことですが、それを通して新しいことを知った喜び、人とコミュニケーションする楽しさ、それを人に評価してもらう緊張感・・・・それらを体験することによって、新しい世界が広がっていくと思うんです。
そのきっかけとして「あの発表をやってよかったな」と感じてもらえたら・・・。

人から聞いて教わるのではなく、自分で説明しないといけないと思うと、その何倍も勉強をしないといけない。また英語で説明しようと思うとさらに何倍も勉強をしなければいけない。日本語はごまかしたり、ぼかしたりしてあいまいに言うことも出来ますが、英語はきっちりと言わないといけないので、本当にきっちりと調べないといけないんです。
そういうことを通して、日本語と英語の違い、面白さや難しさ、そして日本の文化への理解を深めてほしいと思います。

少し前の時代なら「あたりまえ」だったことを、今こそ大切にしなければならないときかもしれません。
日本の文化に接することの少ない今の世の中に
今を生きる若い世代が、熱心に日本文化を学び、伝えようとしている姿勢を見ると
励まされるような気がします。

日本の良さ、素晴らしさに接する場を与える、ということ
そしてそれを伝える人が伝えられる側の人ときちんと向き合うと言うことが
大切でかけがえのないことだと思いました。


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