〜 高橋尚美先生の思い 〜

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学外授業 鹿ケ谷さびえで茶会体験
◆茶道を通して日本の文化を伝える
茶道を中心に据えていますが、点前を実技で行うということだけに固執はしていません。私は「お茶」というものを広い範囲でとらえています。稽古を始めて36年間、お茶を通してあらゆる日本文化に出会いました。着物や軸・・・軸だけとってみても字、表装、布の模様、その技術・・・興味が尽きることがないんです。また生けてある花も、どんな名前だろう、この花入れは何焼きだろう・・・といろんなことが見えてくるのが「お茶」なんだと思います。
それは年齢を重ねるごとに、さらに興味がわき、学ぶことが多くなっていくのです。そんなふうに私自身が感じた、お茶を通して見た日本の文化の魅力をぜひとも次の時代に伝えていきたいと思うんです。

敷居が高いとか、堅苦しいとかのイメージだけを持っている人が多いと思います。もちろん、厳しく真剣にやるお茶はとても大切だし、それがなければいけないと思います。
でも、何も知らない人にその部分だけ伝えても「しんどい」「つらい」「いやだ」と思われてしまうのは、あまりに残念だと思うのです。
その中で私自身が発見してきた、お花、お香、書、着物などのことを少しずつでも「すごいでしょ」「面白いでしょ」「日本ってこんな国なんだよ!」と伝えられる授業を心がけています。

◆今の若者
学外授業 西陣織会館で機織(はたおり)体験

いつの時代も「今の若い者は」と言うんだと思うんです。これは私達も言われているだろうし、きっと私達の親の世代もその前の世代もそう言われたんだと思います。
私から見たら、今の学生達は、よくがんばっているな、と思います。世間が一様に「今の学生はあかん」「勉強をする気がない」「モノを知らない」と言いますが、それはやめてほしいと思います。

見方によってはそう見える学生もいるかもしれませんが、みんなそれぞれ光るものを持っていると思います。
こちらのモノサシで見て、それにあてはまらないから「アカン」というのは良くないと思うんです。
今現在知らないことをとがめるのはナンセンス。年代によって、昔は中学生ならこれくらい知っていて当然、ということをもしかしたら今の大学生は知らないかもしれない。でも、それは時代の流れで仕方ないことだと思うんです。
例えば「畳のへり」を知らないと言って怒る人もいらっしゃいます。でも外国の人が知らなくても怒らないでしょう?
今の若者は極端な言い方をすれば、外国人かもしれない。だって、家の中に和室のない家が不思議ではない時代でしょう?
私達の世代は日々の生活の中にあたりまえに畳があって、自然とヘリを踏まないことを教えられましたが、今の若者には「へりってなに?」という人さえいるんですから。

そういう場合は教えてあげればいいと思うんです。日本人として「畳」「和室」「へり」というものを知っておいたほうがいいよと。
私は大学で最初に和室で授業をするとき「これはヘリって言います」というところから始めます。
こちらが言えば、学生達は確実に吸収してくれます。そのあとの生活に生かしてくれます。
だから教えることをめんどうがらずにやらなければならないと思います。

私自身、目上の方から教えていただくことはたくさんありますし、また逆に若い人から教えてもらこともあります。
年齢が上とか下とか気にせずに、どんどん教え合ったら良いのにな、と思います。

◆学生達の反応
私は自分がやりたかった教職、英語、茶道を合体させたこの授業がものすごい喜びなんですが、最初は、私一人が熱くなって学生達が引いてしまったら何にもならないな・・・と不安だったんです。
でも、やり始めたら身を乗り出して私の話を聞いてくれる学生が何人もいました。まさに少女漫画みたいに目の中に星をいっぱいキラキラさせて私の話を聞いてくれるんです。

着物の着付け実習授業
「先生!すごいですね!私は今まで、日本と言う国があまり好きじゃなかったんです。早く外国に脱出して外国の文化を学ぼうと思っていました。でも、まずは日本の文化をもっともっと学びたいと思いました!」と言ってくれる学生もいました。
それぞれ興味をいだくジャンルが違うようで、毎回違う学生が「先生、今日の授業は面白かった」と言ってくれます。

旧暦というのがありますよね、その授業をするときは「私は今から理科と数学の先生になるからね」と言って、太陽と月と地球の自転、公転や数値を黒板に書いて説明します。なんとなくわかっていたことが、しくみとしてしっかりわかるようになります。
旧暦は月の満ち欠けに基づいているので、この授業ですっかり月が好きになった学生がいました。日本では立待月、居待月、寝待月、などのきれいな月の名前があることを知って「なんておしゃれなんだろう!」って感激したり「今日の満月がとても美しかったのでこの感動を先生にも伝えたくて」というメールが来たりするんです。そういうのって「すごいな!」って思います。

◆今の教育に必要なことは 励ますこと 悪いことは悪いと言うこと

今、何が大切か、必要か、ということでは「学生達を励ますこと」が大切だと思います。
知識を得てもらうことは大学として大前提にはあるのですが、この暗い世の中、自分の夢を持つことが難しくなっています。
私も、落ち込んだり不安になったすることがいっぱいあります。
だからこそ、学生達を励ます教育をしていきたいと思います。
ただ単に「がんばんなさいよ」と言うのではなく、そういう気持ちにさせる・・・ということです。これは大変難しいことです。それこそ人と人とのぶつかり合い、魂と魂とのぶつかり合いと言ってもいいかもしれません。こちらも口先だけではなく、自分のやっていることをさらけ出しながら思いを語って、その人に夢を捨てないでほしいと心から思わないといけないと思うんです。

うちの大学には「エンカレッジ(encourage=励ます)センター」というのがあります。学ぶ喜びをどのようにして見つけ出してもらうか、というのを大学全体で取り組んでいるんです。
私自身は茶道を通してエンカレッジしたいと思っています。3月に茶道の講演をすることになっているんです。
茶道を通して励ませるようなお話、社会に出て行く心構えやマナーを、人と人とがどう関わっていくのか、ということを茶道を通して話が出来れば、と思っています。茶道の作法の中には、そういうことがたくさん盛り込まれていると思うんです。

そういう考え方っていうのを大切にしていきたいと思います。
教育の中で、夢は捨てずに、自分がそれを進めていくんだっていうことを肌で感じてもらえることを、これからもやっていきたいと思います。

それは私自身がいろんな方に助けられて、この励ましと支えがなかったら、ああ・・・もうダメになっていたな・・・と思うことがいっぱいありました。
今もそう思うことはいっぱいあります。

これからの教育現場はそういったことを意識してやっていくべきだと思うんです。

もうひとつ大切なのは「悪い」ことは「悪い」と言えば良いということです。
「大学生に今さらこんなこと言うなんて」と眉をひそめて無作法を見ているということが多々あるようですが、それは良くないと思います。私は直接教えていない学生にでも、例えば喫煙所は別にあるからここでタバコを吸うのはアカンって言うのですが、言われたらわかる学生は多いんです。

言われなかったら良いのかナという一種の甘えがあるんだと思うんです。でも、言ったら「やっぱりアカンわ、やめとこ」って大半の学生は思うんです。
大学の中なら教員が言えば良いと思います。学生はめったに反抗的にはならないし、言ってもらって嬉しいって感じにさえ受け取れるときもあります。

悪いことは悪いと教える。そして励ます。
あなたにはこんな光ったところがあるのよ、っていうことを気付かせるのが大切なことだと思います。

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