小学校一年生が体験する
はじめて
お茶

〜 子供なりのおもてなしと、季節を楽しむ心を学ぶ 〜 
  
飛田早苗さんからのお便り

これは「和の学校」に寄せられた、ある生徒会の方からのお便りです。

ご自分の息子さんのクラスで、「総合的な学習の時間」の一貫として「茶道の授業」を任されることになり
準備の段階からいろいろと試行錯誤して進められました。

初めてお茶に接する小学校一年生にどのようにお茶の楽しさを体験してもらえばよいか・・・。
教える側も真剣に取組まれた様子がつづられています。

その奮闘ぶりと子供達の様子をぜひご覧下さい。

※写真はイメージです。



 東京では、先の台風の通過に伴い、学校でも 授業時間の変更や早帰りなどのため、 翌日の茶道が予定通り行われるかどうか直前まで 定かでなかったので、とても不安でした。 沢山の道具の搬入や、茶菓子の準備などもあったため、 台風が去ったあと無理のない時間に変更されました。

 学校には、和室もなく、茶道のお道具も なく、生活科(1,2年生の理科と社会を合わせた教科)教室に、ワンタッチジョイント式の半畳ほどのたたみが計八枚、四畳分あるだけです。

 ここに、学校から程近いところにある私の実家から、必要な道具を 車で運び込みました。風炉や釜といった大きな道具から、ふきんや 懐紙などこまごました物まですべて、ということで、事前に綿密に リストアップして十分に梱包し、丁寧に運び入れました。 お手伝いのお母様を募り、3人来ていただき、陰点てやお半東さん、 子供達のフォローなどに協力してもらいました。皆さん茶道に接するのは 初めての方ばかりでしたが、興味をもっていただいて楽しくお力添えを 頂きました。(お茶のたしなみはなくても、興味はあるわ、と言う方は たくさんいました。)
 
 今回の件に関して、担任の先生と事前に打ち合わせをしたのですが、これまた先生も茶道に関して何もわからない、すべておまかせします、ということで、自分のプランと進行ですべて決まってしまうのだと思うと、プレッシャーを感じるばかりでした。お尋ねしたら、茶道の知識のある教職員の方が殆どいらっしゃらないということです。

 子供を飽きさせないように、お茶の世界にどう引き込んでいこうか、ということですが、現実離れしたコテコテの茶道ではなく、 和の学校の伊住校長からアドバイス頂いたように、「お茶ごっこ」を通して、「子供なりのおもてなしと、季節を楽しむ心を学ぶこと」にねらいを据えました。

 普通教室の中の仮設の和の空間、4畳半を何とか整え、置き床 を借りて設置し、何も飾らないままにして生徒を迎えました。 体の小さな一年生なので、一回に7人ぐらいずつ畳にはいってもらい、あとの生徒は周りを囲むようにして敷いたござに座ってもらって見学、計4回に分けてお客様をしてもらいました。


1. お点前に入る前に、プロローグとしてちょっとお話をしました。

 


「みんな、お茶ってどんな飲み物だか知っている?    
お茶の木は椿の仲間で、とっても丈夫で長生きする木。
  
お隣の中国という国の山の中には、2000年経っても、
まだ葉が茂っているお茶の木があるのよ。
お茶を飲むと風邪をひきにくいとか、虫歯になりにくいとか言 われてるけど、そんなパワフルな木の葉っぱだから、そのエ キスを飲んだらやっぱりパワーがつくのよ。
そして何と、今日頂く抹茶というのは、葉っぱごといただいちゃうものなのです。ちょっぴり苦いかもしれないけど、とってもきれいな緑色で、よーく味わうと甘いのよ!楽しみにしててね。」

終始こんな口調で話しました。粛々とすすめても途中で 飽きられるのではないかという心配もありましたし、普段我が家に遊びに来る子供達に、普段の口調で話すのが自然かと思いましたので。


2. そして、中国からお茶が日本に渡ってきたこと、
  はじめは贅沢品で、普通の人にはなかなか手に入りにくかっ たこと、普及しはじめてから「茶道」が確立されたことをとても 簡単に説明しました。

ここでも子供達は興味深そうに聞いておりました。
(裏千家のホームページ、「初めての茶道入門」を参考にさせていただきま
した。)

3. ちょうど季節は夏と秋のはざまのような時期なので、
  夏の思い出や、秋のことで楽しみにしていることなどを 尋ね、発言してもらいました。
受け身だけの授業だけでは、子供達が参加しているという気持ちが薄らぐような気がしたからです。
  
子供は次々と楽しそうにそれぞれの季節のイメージを伝えてくれました。

4. そして、「お茶で楽しいおもてなし」、にはいるわけですが、
  「今日みたいにあつーい日に、大切なお客さんがくることになりました。 おいしいお菓子とお茶でおもてなししてあげることに決めたけど、お客さんに喜んでもらって、気持ちよくくつろいでもらうためにはどうしたらいいかな?」と尋ねました。

「クーラー入れて涼しくしてあげる!」  
「氷のはいった冷たいお茶を出してあげる!」
などなど、沢山意見がでました。

そこで、
「でも、昔々には、クーラーもなかったし、冷蔵庫もないから氷も作れなかったよ。さてどうやったら涼しく気持ちよくなれるかなあ。ああ、秋がきたなあ、とさわやかな気持ちになってくれるかしら。」
と、 また問いかけると、さすがに考え込んでいました。

5. そこで、見た目に涼しげなお床の室礼や、お道具の
  選び方を楽しく簡単に説明しながら子供達に実際にお床を飾ってもらったり、今の秋口の季節にぴったりなお茶碗を選んで もらいました。(お客様として畳に座っている子供はそのまま、あとの子供に手分けしてそうしたことを手伝ってもらいました。)

茶碗などは、春や冬のものも少し持参したので、ふさわしいものを中から選ぶということを学ばせました。
      
花器の横に数本の花を並べて、一人一本ずつ思い思いに生けこんでもらう、お月見を想定したうさぎのオブジェを置いてもらう、お菓子を菓子器に盛りつけてもらう、そうしたことも、 こどもに頼んでやってもらったら、みんなとてもセンスがあるのです。活力や純な気持ちがあらわれたすてきな室礼があっと いう間にできあがり、自然にみんなから拍手がおこりました。小さな初秋のスペースが難なくできあがりました。

6. そこでようやくお点前に入ることになります。お菓子やお茶が
 

いただけるということで、みんなわくわくしているようでした。  お点前の動作については、子供達は不思議そうな面もちで眺めていましたが、お道具を大切に扱い、心をこめてお客様をもてなすためのちょっとしたきまりごと、というように説明し、なんとか納得してもらえたと思います。

「かっこいい!」「すてき!」などと賞賛の言葉もありましたが、私の方は、少々緊張いたしました。
      
初めの一服がたてられて、お正客の子供に届けられました。 わかりにくく堅苦しいあいさつは適切ではないと思い、
「ありがとう。いただきます。」
「お先に。」
「ごちそうさまでした。」
という簡単な言葉のやりとりで飲んでもらいました。       

「こういうごあいさつは、普段でもとっても大事よね。
給食を配膳するとき、混んだ駅の切符売り場で列に並ぶとき、"お先に"なんて言えたらとってもスマートで素敵よ。
ぜひいろんなところで使ってね。」
など、ここでも粛々とお茶を点てるだけでなく、あれこれ思いついたことをしゃべっていました。


7. 一通り末客までお茶がまわったところで、次の子供達に
 

入れ替え。今度は子供達にも茶筅を振らせたり、お半東さんを してもらおうと思い、今お茶をいただいた子供に順次やってもらいました。とても楽しそうでした。

その一方で、お手伝いのお母様にも陰点てをしていただき、長く待たせることなくスムーズにお茶が届くようにしていただきました。
      
苦い、または熱くてなかなか飲めないと言う子もおり、抹茶の 量を減らしたり、お湯を少し冷ましてからたてたり、その場その場で好みを聞いて対応し、なんとかみんなに飲んでもらうことが出来ました。           


8. あらかじめノートと鉛筆、色鉛筆を持って生活科室に来てもら
 

っていたので、お客様も済み、お半東さんもして、そろそろ飽きてきたような子には、先ほどの続きで、秋を思わせる物の絵や、言葉をノートに実際に書いてみるように話したら、騒ぐことなくおとなしく鉛筆を握っていました。           


9. 自分ではまだまだ話したいことがたくさんあり、事前に勉強し
 

たり考えたことを沢山ノートに書いて用意しておりましたが、アドリブの話や子供の活躍でどんどん時間が経ってしまいま した。    

最初と最後はお辞儀でごあいさつをしましたが、畳に正座して手を膝前に下げてのお辞儀をすることの少ない今のこどもたちには、目新しいことばかりだったと思います。

後から考えるとこうすれば良かった、と思うこともたくさんありますが、何より子供達と共に考え、一緒にお茶を楽しめたことが何よりだと思っています。