専慶流「いろは」

 「こころ」「精神」

「いけばな、華道って?」

野山を散策していてふと目にとまった一輪の花に様々な思いを巡らせた経験はありませんか。私達は知らず知らずのあいだに植物と会話し、私達の最も近い関係を作りあげています。

それは春夏秋冬という四季の気候が作りだす「うつろい」が私達に、「感動」「美意識」を昇華させ、日本独自の豊かな感性を育ててきたからにほかなりません。それは表面的な美しさだけではなく、内部に潜む内なる輝きをくみ取る深い洞察力をも身につけていきました。

いけばなはそんな日本の風土から当然のようにして生まれた伝統文化で、暮らしの中に深い美意識を積み上げ、愛でる心や、和の精神にまで発展させたのです。

また、いけばなは「華道」とも呼びますが、精神部分にも深くかかわり、あるときは励みに、またあるときは抑制に、いけばなをすることで人生観から性格にいたるまでのこころの浄化効果が、大きく期待出来るのです。
専慶流の座右の銘とでも云うのでしょうか「花に生かされ花に学ぶ」は先代家元が常に口にしていた言葉で、まさに華道の心髄を的確に言い表しています。




 「知識」「歴史」「道具」

「知識」
 
いけばなを学ぶには伝承されている様々な日本文化や人々の暮らしを知り、その環境に身をおく事が第一です。漆器、染、陶芸、絵画、詩…すべての文化は昨日今日突然生まれたのではなく、様々な人の知恵と創造で築きあげられたもので、直接肌に触れ、観察し、その中に生活する事ではじめて理解が深まる事でしょう。
 
 しかしそれは困難な事で、歴史館や古都を歩きその空気をくみ取る努力は、とてもいい勉強になります。とくにいけばなは暮らしの中で育った総合芸術で、花を知るだけではなく、あらゆる芸術を吸収するどん欲さは欠かせないのです。

 いざ生けるとなると、花材を切り、鋏を使って花材を切り、剣山に挿しますが、その一つ一つにも要領があります。また、素材の見方や枝取り、希望する表情に曲げたりする技術などは一朝一夕には身につかないものです。しっかりした指導者について体得したいものです。

 素材を長持ちさせるために手当をしますが、これを「水揚げ」といい、素材によってその方法は異なります。茎を水の中で切る「水切り」が最もポピュラーな方法ですが、他に塩や砂糖を茎に擦り込んだり、熱湯に浸けるものもありますので、知識を深めておきたいものです。


 素材の組み合わせも大切な要素です。一種類の花材でいける場合もありますが、大抵は他の素材と組み合わせて生けます。表現が異なる様式によって組み合わせも異なりますので、四季折々の組み合わせを幅広く学んでおきたいものです。
 
「歴史」
 いけばなの起源は遠く時代をさかのぼりますが、室町、東山時代以後立華が急速に発展し、寛永年間より元禄に至る頃がその爛熟期でありました。

 専慶流は江戸時代の(1669年)寛文九年正月、富春軒仙渓によって創流されました。

 流祖富春軒仙渓は当時独創的な立華の名手として謳われ、貞享五年五月、立華時勢粧(りっかいまようすがた)八巻(全巻家元蔵)を出版。これには多くの草木生態の研究とその特徴を述べ、それを生かす手法を教えています。その他功用論、修道論、風体論、自然の出生と形式の問題などについても卓越した見解を述べ、百数十瓶に及ぶ傑出した立華の作品を載せているのです。この書はひとり専慶流の花伝書というだけでなく、いけばな史上においても充実した「華道論集」として注目を集め、今日の貴重な資料となっているのは云うまでもありません。
 
 以来350年にわたり花の心を最優先した伝承美を大切に、常に一歩先を見こした美の創造に傾注、いけばな普及に全力投球しているのです。
 1977年、西阪専慶が十七代家元を継承。

 

「道具」
道具には花材を留める道具=剣山(けんざん)、叉木(またぎ)など=、素材を切るものに花鋏、鋸、作品の一部となる花器、花台他があります。初心者には花器、剣山、花鋏、花包みがあれば今すぐ始める事が出来ます。
 専慶流では応用範囲の広い花器、剣山を制作、推奨しています。(剣山は素材を安易に留める道具ですが、剣山は専慶流が考案、普及させたものです。)


いけばな専慶流の様式

専慶流はいけばなの爛熟期である江戸時代の創流なので、伝統ある様式美を含め、素材に応じて適切に選べる表現方法として次の様式と花型をそなえています。

 

立華(りっか)
●真の花型
●行の花型
●草の花型
生花(せいか)
●真の花型
●行の花型
●草の花型(株分、管いけ、重ねいけ、吊りいけ、掛け花、雅整体、現代生花など含む)

投入(なげいれ)
●立体型
●傾体型
●横体型(左右対称形含む)
●流体型
●垂体型
盛花(もりばな)
●立体型
●傾体型
●横体型(左右対称形含む)
●流体型
●並列型(複合形含む)
●平面体
現代花(げんだいか)
●直上型
●傾体形
●左右対称
●下垂型
造形(ぞうけい)



 「鑑賞の礼儀」

床の間での拝見作法などありますが、現代ではそのような機会は一般にはほとんどなくなったと云えます。しかし、訪ねたお宅でいけばなが飾ってあれば必ず正面から静かに鑑賞して下さい。洋室では立ったままでいいですが、和室では正座して鑑賞します。また、コートやオーバーなどは脱いで相手に敬意を表し、生けた人の心を察し、さりげなく貴方と相手の心が通じあえる所作があればいいでしょう。展覧会などでは出品者と会場で出会ったら挨拶し、相手の労をねぎらうとともに、ちょっとした感想を話すと、より親近感がでて、いけばなの和の精神につながるのです。

 

執筆、専慶流副理事長・西阪慶眞(家元実弟)

※詳細は専慶流ホームページを参照下さい。
http://k-ikebana.com/

mailto: keishin@k-ikebana.com


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