孫の代まで・・・世代を越えても愛される




吉田染工


絵ではなく技である。
手間隙のかかる技・摺り(かちん摺り・無地摺り)。
お忙しい中、吉田博さんの工房に伺わせていただき取材させていただきました。

摺り染めの歴史


摺り染技法のはじまりは、江戸前期のことです。
長い戦乱から開放され、豪華な衣装など自由な社会風潮の対策として,1683年 奢侈(しゃし)禁止令(庶民のぜいたく禁止令) が発布されました。
それにともない、贅沢な手絞り染め・鹿子絞りが禁止され、
その代用で文様を型紙に彫り、刷毛を使う技法、摺り匹田が生まれたといわれています。

1999年4月 「京友禅摺染め技術保存会」 施行

衣料の装飾技法として用いられ始め、京都の型友禅染技術の原型ともいえる昔ながらの高度な染色技術「摺り友禅」の技術が今も伝統技術として、人と技能の冴えを伝えて京都の歴史と文化を綴っています。
この摺り染技術に関わっていることを誇りに思い、名誉とし、貴重な伝承文化と技術を絶やすことなく、将来に伝えていくことが大切な役目だという思いで、「京友禅摺り染技術保存会」が結成されました。



吉田博さんの摺り友禅




春霞

美術年鑑社創刊
日本の美「さくら」掲載作品
さくら文様の摺り型




摺りの工程

カチン摺り


吉田さんの工房
友禅板 板揚げ
星を目印に型をあわせます
重ねていく摺りがずれることのないように
生地に予め星と呼ばれる印をつけておきます
四隅をきっちりとあわせます。

カチン摺り
文様の輪郭を摺りあげます
彫刻にあわせて毛先を摺り込んでいきます

三枚の型が使われ、着物・顔
そして途切れている部分が摺られます
人物や着物などの動きが
生き生きと表われます

色さし
一色の色さしに何枚もの型を重ねます
一気に摺ると滲むためなのだそうです

ぼかし摺り
指先で感じながら絵を描くような感覚で
ぼかしをいれます

立体的で豊かな表情になります
染料分が多いと滲んでしまい、
少ないとぼかすことができません
この後50枚程の型を重ね、いろいろな色をさしていくのです
出来上がりのかちんの着物です



無地摺り
(八掛)


無地摺りでは1枚の型で摺られていきます
一型、平均して摺っていきいます
染料をたっぷり刷毛につけ一型分摺りあげます
最初は、軽く刷毛をおろし、染料の減り具合に応じて力を加えていきます
平均して摺りあげるのはとても難しく、やはり職人の経験とカン・腕です

この工程を7回繰り返します
重なりをつくる為の時間の配分(乾きの状態)を考え、2回、3回・・・・と重ねます



道具

染料
昔は、カチン棒と呼ばれる
トクサを炭化させた染色用の墨でしたが
現在は手に入りにくく
墨汁に呉(ご:大豆を粉にして水に溶かしたもの)を混ぜ、
滑りをよくするために少しお酒を入れてつくられます。

カチン(輪郭)を摺る型
色さし(ぼかしを摺る)の型
生型(なまがた)
彫刻をしたままの型
生型でなければ摺りはできません

刷毛

ぼたんばけ
鹿の毛でつくられています。
黒毛・まじり毛・白毛があり
大きさも大丸・間丸・中丸・小丸・豆丸があります。
色の数だけ刷毛が必要です。

黒毛
雌鹿の毛で
腰が強くカチンに
適している
まじり毛
黒毛と白毛の混合
白毛
雄鹿の毛で
太くてやわらかい


無地摺り
生型
刷毛


かちん摺りとは違い、
この型一枚で
一つの文様を摺りあげます

ぼたんばけの
白毛が適しています
大きさはここでは
大丸を使われます



型の彫り師も少なくなったこともあり
吉田さん自ら型を彫られることもあるそうです
形がふぞろいでも、それがまた味わいとなることもあるそうです。
庭には草花が植えられており、型の素材とするスケッチをされるそうです


お庭の草花
スケッチ

すばらしい摺りの技をもつ吉田博さんの草花の描写

やさしく、温かい人柄が
感じられます。

和で使うものぐらいは、日本で作って残したい
伝統工芸士 吉田博さん

カチン摺り、友禅競技会通産局長賞
第25回 京都府工芸産業技術コンク−ル入選
各展入賞
瑞宝単光章受賞

文化とは時を重ねても色あせることなく、美しい。
古びるほど美にかわる。
それこそが伝統といえるのだとおもいます。
それがゆえに、流行にはしるのではなく、手間隙をかけても、残していきたい。

消費者の方にも「日本の伝統を守っていかなければならない」
という意識があり、創り手の思いを理解していただき、使っていただけることがなによりの喜びです。

世代を越えて、「父母から・・・、祖父母から・・・、使われてきたものを身に着ける」という喜びを感じてもらう。

それぞれの思いを重ねるかのように、完成した摺りに、「伝統工芸士 吉田博」と入れられ、そして消費者のお名前も刻み込まれるのです。


摺りが重ねられるたびに、浮かび上がる豊かな生き生きとした線・色・形、大量生産を理由に機械化される物が
多い中で、人の手が織りなす味わい深い表情は心を惹かれるものです。

そして何より、日本の伝統工芸、摺り染を守り残すという熱い思いと、手の温もりを感じさせるような
温かい吉田さんの笑顔が印象的でした。

この笑顔をも、技術と共に受け継がれ、多くの人に愛されるものであって欲しいと願います。


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