織道楽 塩野屋  (京都府上京区)

〜織物づくり〜
 「伝統の技を残すには」


2001年12月7日

プロデューサー
服部芳和

京都市上京区一条通六軒町

「織道楽 塩野屋」は、
滋賀県甲賀郡塩野村で漢方医をしていた
服部喜右衛門が、約300年前に
西陣の地に絹織物の機屋を開いてから続いています。

現在の当主 服部芳和氏は14代目になります。

ホームページ : http://www.shiono-ya.co.jp





失われつつある織物「御召(おめし)」の伝統的な技術を、
今の暮らしに合った形で残したい・・・
そんな思いで織物づくりをプロデュースする服部氏。

ここまで「二重壺垂れ」が出来上がるまでの工程とそれぞれの職人さんをご紹介して参りました。
ここでは、職人さんとチームワークでものづくりに取り組む服部氏の
仕事にかける情熱や哲学を中心にお届けいたします。

服部氏の「もの作りにかける思い」をお伺いいたしました。



| 着物の変貌 | 西陣の絣御召 | 矢絣 | 着物から織物へ |
| 新商品の開発 | 「壺垂れ柄」の復刻 |

着物の変貌
織道楽・塩野屋 14代目当主 服部芳和氏
「本来、着物は日常の中に生き続けていた民族衣裳でした。明治以後、西洋文明がどんどんと取り入れられ、戦後は日常の中から姿を消し始めました。日常から消えた衣服なんて民族衣裳と言えるのでしょうか。」

「日本には、文明がどんどんと入ってきた代わりに、失ってしまった文化があるのです。織物でいうならば織物本来の『風合い』を楽しむという文化を見失ってしまいました。」

服部氏は、織物の風合いをなくしてしまったように、心の風合い(意識)までなくしてはいけない、と訴えられます。

西陣の絣御召
西陣の絣御召(かすりおめし)を「日本の美意識として残していきたい。」

「塩野屋でずっと織り続けられている『絣御召』についてお話しいたします。絣とは字の如く、"糸を綺麗に並べる"という意味があります。」

「絣御召は染め分けた縦糸を、ずらすことによって作り出される柄です。縞御召も同じで、縦糸をいかに綺麗に並べるかによって、より繊細で、粋な縞柄が生み出されるのです。」

「御召の風合いは、コシと張りがありシャッキリとした着心地です。それは横糸に御召の強撚糸を使っているからなのです」
※詳しくは後の連載でお話いたします。

「西陣は御召という技術開発のおかげで「縦絣(たてがすり)」という縦糸だけで色柄を表現するという技法が発展し、今もなお研究が重ねられ、世界の中でもめずらしい織物となりました。」

矢絣
「西陣絣の中でも代表的な柄に「矢絣」があります。これはもともと矢羽根をモチーフにした柄です。
矢羽が下下上上と隣同士が必ず2個ずつ同じ方向を向くという黄金率によって割り出された柄です。最高の美意識によって作られた柄と言えます。」

「矢絣は特に女性が一人前になったときに袖を通すことのできる、ステイタスのある永遠の憧れの柄でした。これをすたれさせてはいけません。」

この矢絣で振袖を作られたり、スカーフを作られたり・・・最近ではこの柄の美しさが見なおされてきました。
西陣絣の代表柄「矢絣」
ステイタスのある永遠の柄です。
縦糸がずれているのが見ていただけるでしょうか。
御召で織られたシャツブラウスに
絣のスカーフを合わせてみました。
西陣絣のスカーフ
「今見直してみても大正モダンを彷彿させるような昔の柄が台帳に残されています。
それをいかに今風にアレンジして提案していくか、という思いが日々頭の中をかけめぐっています。」

*下の柄は塩野屋で古くから大切に残されている柄の一部です。


着物から織物へ
「絹の特徴・・・欠点もすべてふまえた上で、着物とは違う織物ができるのではないか、という試行錯誤を繰り返しています。」

 服部氏自身も自分の所で織った絹の生地だけで身を纏う、という生活スタイルを築いていきました。

御召(強撚糸)の風合いで、何か健康に役立つ織物ができないか・・、という思いで開発を重ね「浄肌衣(じょうきい)」というブランドが出来上がります。

織物をもう一度「風合いという世界」に戻すという、着物から織物へというギアチェンジが服部氏の中で変革されていきます。

「風合いこそ、西陣の技術と伝統の職人技がなければ生まれてはきません。一つの織物の中に、職人同士がチームを組んで作り上げた時、職人が持っている職人魂が物に現れます。その思いを、いかに世の中に提案できるかが、自分の立場であり役目である、と思っています。」
織道楽 塩野屋の志す4R

        Reduce  (削減する)
      ● Reuse   (再利用する) 
      ● Recycle  (循環する)
      ● Redesign (デザイン観をもう一度考え直す)

この考えの原点には、絹という素材を使い、西陣織の技術で、何か健康や生活に役立つ織物が作れないだろうか、新しい価値観が京都から発信できるように、という願いが込められています。


新商品の開発

好きが高じて開発された商品もあります。それはコーヒーフィルターです。

御召で織られた生地は、薄くて目が細かく密な織物です。この特性を生かして、コーヒーフィルターを作ることができないだろうか、という発想から生まれました。
コーヒー好きの陶芸家に出会うことにより、御召で作ったフィルターに合った、一つ一つ手作りの円錐形のドリッパーを焼いてもらうことが出来たおかげで、服部氏の念願がかないました。

 さて、絹のフィルターの秘密とは…

1. えぐみ、渋みが消える。(御召の生地がえぐみ、渋みを通しません。)
2. 円錐形なので、じっくりと蒸らしながら入れることができるのでおいしい。
3. 繰り返し使えるのでゴミにならない。
4. 織物なので煮沸すれば綺麗になる。|

 「織物も生業だが、コーヒーも好きこそ物の上手なれ、で新しい商品開発をすることができました。」と、とても素敵な笑顔でコーヒーを入れてくださいました。とてもおいしかったです。ごちそうさまでした。

 どうぞ皆様も一度、絹のおいしさを味わってみてください。

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