京湯葉 静家(京都府 美山町)
京都市内から北へ約2時間ほど車を走らせた、山あいに美山町はあります。ここは萱葺の家が多く残ることで有名な町。
山も川も空気もきれいなこの里に、湯葉をていねいに作る「静家(せいけ)」はあります。
「やるからには京都の伝統産業をやりたいと思いました。自分のまわりに生湯葉を食べたことがない人が多かったのと、物作りが好きやったので 可能性があると思て、この道に飛び込んだんです。」
厳しい修行の後、この美山に移って来られました。
「湯葉をつくるためには、美味しい水と澄んだ空気が必要やったんです。それに土地も安かったですしね。」
10年前からここで湯葉づくりを始められた静家のご主人、中田さんは笑いながら言われました。
美しい布のようなやわらかな湯葉。
しかし、この湯葉づくりはその姿からは想像できないほど、毎日の「しんどい」作業により作られています。
今回はその湯葉づくりの工程と、それにかける静家のご主人、中田太郎さんにお話を伺いました。
静家 湯葉づくり風景
2002年2月14日
湯葉づくりは早朝から始められます。
「大豆というのは人間に必要なものが全部入っている。
その中でも一番消化吸収が良いのが湯葉です。
昔は病人さんには湯葉を食べさせていたくらいやしね。
そのことをわかってほしい。」
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湯葉づくりの準備
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湯葉作りは朝、4時頃から仕込みを始めます。
厳選された国産の大豆と、美山の澄んだ水が美味しい湯葉を作ります。
「湯葉作りに一番大切なのは手間ひまかけることと、良い味を出すには良い豆のブレンドやね。」
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湯葉を作るための準備をします。
機械を通って 豆乳を作ります。
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豆乳を作るときに出るカス。つまり「おから」です。
お豆腐屋さんのものより水分がなくサラサラです。
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長さ5mの「船」と呼ばれる大きな容器に
真っ白な豆乳が張られて行きます。
この豆乳は不純物がまじると
きれいな湯葉が取れないので
毎回、ゆっくりと時間をかけて作られるのです。
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それを28に区切り、下から温めます。
気温が低い為、あっというまに
湯気で部屋中が真っ白になりました。
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気温と豆の状態で膜の張り方が違うので毎日神経を使います。
湯葉が取れるくらいに膜ができ始めるのが午前7時くらい。
1回目はこの7時から10時くらいまで。
そのあとも2回目、3回目と同じ工程を繰り返します。
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汲み上げ湯葉
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「汲み上げ湯葉」は、
膜が張り始めた一番最初に取れる湯葉です。
1回に12パックほどしか取れません。
「炊き出してから 30分くらいが一番良い。」
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大変貴重な「汲み上げ湯葉」です。
とろけるような口当たりは独特のもの。
わさび醤油で頂くのが美味しい。
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引き上げ湯葉
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こちらでは、「汲み上げ湯葉」のあとに作る「引き上げ湯葉」の為の串を準備しています。
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串を使って
紙のような薄い膜が引き上げられます。
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すっすっと
一枚ずつ丁寧に素早く引き上げます。
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あっというまに湯葉の旗が並びます。
この湯葉も最初のものと、あとのものでは味も香りも厚さも違います。
最初は大豆の香りがしますが、あとになるほど甘味と黄色味が増し、厚くなります。
「あとの方が好きやと言われる方もおられます。」
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引き上げられた湯葉は手で3枚に折りたたみ
重ねられます。
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約140枚ほどの引き上げ湯葉が作られます。
これを、お鍋に入れたり
バターで軽く両面を焼いて湯葉ステーキにしても良いとのこと。
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たたまずに引き上げたままの状態の
あとの方で取れた厚めの湯葉を使って、
ぎんなんやキクラゲ、百合根を包んだ「美山包み」も好評です。
揚げて含め煮をしてくださいとのこと。
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湯葉製品
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引き上げ湯葉です。
この薄い湯葉の中に
驚くほどの深い味わいがあります。
食べ方のレシピ付きです。
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こちらも新しい主力商品。豆乳のプリンです。
やさしい大豆の香りが
ほんのりとした甘さと溶け合った
日本の誇るデザートになりました。
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こちらは、豆乳のプリンと小豆を 組み合わせた「ふわふわプリン」。
とろりと口の中でとろけるような甘さは、少し大豆の甘味が加わって、
まったりとしたとても深い味わいです。
「ええ豆乳を絞っているのでそれを使った製品をもうちょっと増やしたいと思てます。」
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この美山に来て10年。
「この仕事は自分にむいていたみたいやね。こちょこちょ作るの好きやし」と楽しそうに話される中田さん。
「一般家庭で湯葉が簡単に食べられる流れを作りたい思てます。一部のファンだけではあかん。お店でなんぼきばって(いくらがんばって)食べてもろても、家庭で食べられへんかったら、あかんと思う。残っていかへん。」
湯葉作りだけでなく、実際に食べられるお店も、この美山と京都市内に持っておられます。
「お母さんから子どもに伝わるような、そんなものを出してます。料理屋さんではなく、家庭で食べられるようなもの。湯葉を家庭で食べてもらう為に・・・それが遠回りみたいやけど、一番近道やと思てます。」
「味は『これでええ』というのがないでしょ。終わりがない。湯葉は簡単な味みたいやけど、いろいろ工夫していろんなことができる。たくさん挑戦していきたいですね。」
少年のようにニコニコと笑いながら目を輝かせて話される中田さんは、今年で還暦。 湯葉にかける夢はまだまだ続くとおっしゃいます。
「一人一人が仕事のことプラス世の中のことを考えて仕事をすることを心がけていたら、ほんまに世の中は良くなると思うよ。
それに一人一人が身近にいる一人を、励ましたり、勇気付けたりするだけで、いろんなことが良うなっていくと思います。」
仕事にかける姿勢と生きる姿勢が、良いもの作りを支えているのだと教えていただきました。
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