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《「にほんのこころ」は平成14年から15年にかけて取材させていただきました 》

京からかみとは-
襖に施される一種の版画で、桂離宮や寺院、茶室などに現在でも使われています。 和紙に雲母(キラ)や絵の具を使った美しい文様は、公家好み、寺社好み、茶方好み、町家好みなど範囲は広く、現在でも新鮮で洗練された美しさがあります。
京からかみの歴史
 
三十六人歌集
嵯峨本
唐紙が中国から日本へ入ってきた頃、書の紙として用いられていました。
この「三十六人歌集」は西本願寺に所蔵される、平安時代に作られたもので国宝です。
様々な種類の和紙を染め、直線や自由な線で切り継ぎ、文様をキラ刷りするなどした、華やかで繊細なものです。
 
慶長年間(安土桃山〜江戸初期)に京都の嵯峨の地で、本阿弥光悦を中心に刊行された美しい本。 唐紙が使われています。
 
和国諸職絵尽
唐長の由来
菱川師宣画 1685年作  江戸中期の職人たちの姿が描かれています。
ここに京からかみを刷る職人の姿も描かれています。
 
唐長の名は創業者でもある千田長右衛門が唐紙屋をはじめた頃、唐紙屋長右衛門と呼ばれていたことによります。
 
大正時代の唐紙見本帳
これは大正時代に作られ、現存する唐紙の見本帳 です。
見本帳と言っても、板木のある柄が白い和紙に 刷られた単純なもので、当時の人々は和紙の地色や 紋様の色を想像しながら商談していたといいます。
 
京からかみの特徴
 
いろいろな桐の文様
キラ
唐紙の中で一際多く存在する紋様が桐紋様です。
桐の紋様は身分の高い者に許された紋様で、あこがれた人々が桐のデザインをアレンジし、種類が増えていったといわれています。
 

唐紙の重要な絵の具である雲母(きら)は,普通ウンモと呼ばれる鉱物です。
唐紙ではその粉末を顔料に使います。
「きらめく」という 言葉にあるように、うっすらと上品に光る特徴があります。
 
蝋燭の灯りと唐紙
キラの入った唐紙が多用された時代、部屋の灯りは 蝋燭が灯る明るさで、非常に薄暗い空間でした。
蝋燭に照られると唐紙の一部がその文様を現し、 さらに蝋燭の炎がゆらめくと文様がきらめく、なんとも情緒的な空間が広がります。
 
京からかみの種類
 
公家好み
茶方好み

公家たちは有職文様を好んで用いました。
菊、桐、藤、竹、楓、松などの草花文を、菱、角、蜀江(しょっこう)、円、襷(たすき)、立涌(たてわく)、七宝(しっぽう)などの幾何文と組み合わせたものが多く、また、鶴、雲文、青海波なども好んで用いられました。
御所関係では、萩の丸・梅の丸のような丸紋が多く、雰囲気は、雅で気品があり、優しい雰囲気のものです。

 



茶方好みには幾何文様はあまりなく、植物文様、特に桐文が多くあります 。
茶人たちの洗練された感覚で選ばれ、茶道の家元は独自の柄を彫らせたりもしました。
特に有名な文様は、表千家の残月亭に使われている千家大桐および鱗鶴(うろこづる)、裏千家好みでは四季七宝、細渦(ほそうず)、武者小路千家好みでは吉祥草(きっしょうそう)、太渦 (ふとうず)などがあります。
いずれも繊細で、とくに洗練されたデザインです。 その他、千家好みであった千家松葉、丁子型、銀杏(いちょう)の丸、などの板木が数多く残っています。
 
寺社好み
武家好み
広い空間の多い寺社では、瑞雲(ずいうん)、霊芝雲(れいしうん)、大頭雲(だいとううん)などの雲文など大柄の文様が好まれました。 唐長には各お寺の寺紋の版木が数多くあり、約百枚ほど保存され、現在もよく使われています。 たとえば東西本願寺の抱き牡丹、下がり藤、知恩院の三葉葵、抱き茗荷(みょうが)などです。 紋の大きさは平均すると六寸径から七寸径。 仕上げはほとんど千鳥型に配列され、雲母押しが多く、時には金箔、銀箔押しもあります。
 
武家好みは、幾何文様など、硬さのある文様が多くあります。 代表的なものが根引松(ねびきまつ)、紗綾(さや)型、雲などです。 これらの文様の種類は豊富で、それぞれ十種類前後あります。 雰囲気は男性的で、大正・昭和初期に好んで需要があったといわれています。
 





町家好み
町人が好んだ町家好みは種類が豊富です。 花鳥風月、光悦・光琳好み、小紋柄に分けられますが、梅、桜、秋草 、雪花など、四季折々の文様が数多くあります。 全体につつましい、小柄なものが多いようです。
 
京からかみの今
 
唐紙を貼る
建築と唐紙
唐紙は「下張り」に和紙を多用します。この 「下張り」をしっかり行うことにより、壁やふすまの 吸湿放湿性が良くなり、部屋の中を快適に保つ とともに、耐久性も良くなり、大切に扱えば100年以上もつといわれます。
小さな唐紙の文様を合わせながら貼るこの方法は「小貼り」と呼ばれています。

唐長十二代目になる聖二さんは、唐紙づくりに加えて、自分で現場に出向き、唐紙を貼ります。
 
次男の靖之さんは一級建築士です。
唐紙が生きる建築を設計しようと、 近い将来、建築事務所もここにかまえる予定です。

現在は聖二さんとともに、唐紙づくりにも励んでいます。





 
   
インテリアや壁紙に
若い世代にも

千田さんと妻の郁子さんは、伝統的な仕事をしながら、唐紙をインテリアなどにして現代の暮らしのなかに生かしていく提案もしています。

襖などの相談には主に郁子さんがうけられます。


 
工房の隣には小さなショップがあります。
京唐紙は現在も「襖紙」として製作されていますが、若い人にも親しんでもらおうとポストカード・レターセット・コースターなど小物類が製作されています。

長女の愛子さんは唐紙の柄を生かしながら、自分で様々な小物類を作っています。
 
   
京からかみの商品展開
   
壁紙
いにしえから襖の紙として使われてきた唐紙は、今でも寺院や茶室、数寄屋建築などに使われています。
 
最近では襖紙だけでなく、壁紙としての展開も提案しています。
洋間の壁紙にも合うと訪れた方に驚きを与えています。
 
   
インテリア
小物類
屏風(びょうぶ)や衝立(ついたて)、またランプシェードなどのインテリアの商品開発も多く手がけています。
 
ポストカードや便箋、ぽち袋、熨斗袋などの小物も一つずつ丁寧に仕上げています。これらのものを求めるため遠くから多くの人がここを訪れます。
 
   
思い
   
板木
手かげん

江戸時代から続く板木を今も使いつづける唐長。板木蔵の中で千田さんが手に持っているのが一番古いとされている板木です。
「古いということはシンプルなんです。多少摩滅していたり欠けていたりしても、かえってそれが硬さをそぐことになって、本来唐紙に大事な、一歩引いた良さやなじんだ良さがでてくるように思います。 」

 
唐紙はほとんど道具を使いません。板木、絵の具、絵の具をつける「ふるい」、それから手。
「手は大事です。でも、手が主役にならんようにしないといけない。技を見せてはいけない。技を見せた唐紙はイライラするもんです。手はそっと添える程度で良いんです。板木の模様が紙にうつるのをさりげなく手助けするのが手の仕事です。」
 
   
ワキ
「唐紙は本来脇役のものであると親父が良く言ってたんですが、最近特にその時その時にその言葉を感じます。
板木に絵の具をつけて唐紙の模様を和紙にうつす。和紙を生かすための脇役です。そして出来上がったものが襖(ふすま)に貼られます。その襖は部屋を引き立てるための脇役です。そう考えるとすべてワキ、ワキワキなんです。

私自身ももっと後ろのほうに行かんとあかんのと違うやろか、と思っています。後ろのほうにおる、という姿勢、それが唐紙の本質じゃないかな、と思っています。 」
 
   

唐長
〒606-8027京都市左京区修学院水川原町36-9
TEL 075−721−4422 FAX 075-721-4430
URL  http://www.karacho.co.jp

 
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