川の学校
第五回目 吉野川下流 善入寺島(ぜんにゅうじとう)
平成14年10月12日・13日・14日 
10月13日
最後の夜話

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夜になり、焚き火のまわりで夜話が始まりました。
最後の夜です。
 

姫野さんのお話

最初はハーモニカの演奏。そのあとにお話をしてくださいました。

「1960年代、大人にとっては後悔する時代でした。川、海が変わって行きました。 1960年代は、今までの歴史で一番変わった時代。それからの20年間で日本人自体がガラっと変わってしまった。
今までずっと後悔してきたことを、これからは変えるぞ、という挑戦する思いや、本物の川ガキになろうな、というこの川の学校はその時の反省からできました。

僕らの世代の体型はみんな、こんなんだよね。
野田さんが言ってるけど、日本人は外国人と喧嘩するときにはカヌーに乗ったらいい、って。それは座っていると同じ位の高さなんだけど、立つと外国人のほうがずーっと背が大きくなってしまう。
日本人の体型は、ずーっとこんな体型で続いてきたのに20世紀の20年間ほどで変わってしまった。
平均身長、変わったでしょう。10cm位。食べ物も変わった。我々の世代はほとんど肉を食べなかったからね。君達は肉をたくさん食べるでしょう。
これだけ人間の骨格は変わったっていう人種は今までの世界史の中でどこもないよ。
カッコ良くなったけどね、本当は怖い部分があるね。
そして、考え方も変わってきた。

川の学校ができるキッカケになった吉野川の可動堰の建設問題。それに対してみんなで反対運動をして、住民投票をして、その計画が白紙になりました。日本で初めてのことです。
自分達の遊んだ川を、きれいなままで子供達に渡したいな、という大人達が、何万人という大人達が動いたんです。そして、とうとう国が作っていた可動堰の計画を白紙撤回した。
それから、どうする?って話なんです。

今ね、30年より前に楽しめた吉野川みたいな川がほとんどなくなっているんだけど。そういう川を変えた一番大きな原因っていうのはダムなんだよね。
この前、早明浦ダムに行ったよね。近くのおじさんが話してくれたね。
そのときに僕も最後に言った。ダムを作ってしまうと人間の気持ちも壊されてしまう。だけど、もっと川が壊される。川には、いろんな命が、海に行ったり山に行ったりする・・そういう循環があって、その中で人が生活してて、いろんな生き物への優しさやそれを食べて美味しいっていうことがある。でも川が壊されると、そんなものがどんどんなくなっていく。

ダムが作られると、そこにお金が動く。1000億とか2000億とかの大変なお金が動く。
ダムが作られると村が沈むから反対する、そうするとお金を持ってくるのね。「賛成してくれるとあなたにお金あげます。」って。お金で自分のふるさとを売ってしまうことになる。いやだと言うと皆からのけものにされてしまう。
そういう形でダムっていうのはいろんな今まで平和に暮らしてた人達の気持ちを変えてしまう。
そういう時代があった。
確かに、ものがたくさんできて、豊かになって、体格だってカッコ良くなったかもしれないけれど、そういう形で自分のふるさとがなくなって、川がなくなってしまって、あとは愚痴しかでない。

吉野川の運動でよかったな、というのがひとつある。
国のすごい力、お金がたくさんある力に対して、自分達の川が、これが本当に素晴らしい川なんやと気がついて、ひとりがひとこと言う、20万人がひとことずつ言ったら、20万ことになる。そういうことをやったら変えられる、っていうのがわかった。
そういう吉野川を持っとることが自分達の誇りや。

日本中の川にダムができる。全部川が変わっていく。
みんな同じことを言っとる。「ダムができる前はうちの川はものすごく良かった。日本一の川だった。」って。
でも、そのことに気がついたのはダムができてから。
そして、川をダメにしたのは最終的に自分達やということを心の奥ではみんな知ってるわけ。「自分が一番大事なものをお金で売ってしまった」ということをみんなどっかで気づいている。

いちばん怖いのは、すでにそういう形でやってしまったこと、つまりプライドがなくなってしまったことが一番怖い。

吉野川で川の学校を作れた。
問題が起こったのは10年前。そのときに、こんなんできたらええナ、と思っていたわけ。
そして、ほんとにでけた。本当に嬉しかった。君達が来てくれて嬉しかった。
何が嬉しかったかと言うと、大人達が、こういう形で吉野川を守ったよ、って川の学校で君達を迎えられるのが嬉しかった。

次に君達にして欲しいなーって思うのは、本当に良い川を守ったら、これだけ楽しいことがあるってことを、それを多くの人に伝えて欲しい。
かなり今、日本の自然は厳しい、ホントに厳しいんだよ。
今地球の環境問題は怖いことになっている。新聞見て知ってるよね。
おとといの新聞にこんなん、載ってた。
世界の霊長類の三分の一が絶滅寸前にきているんだって。人間に一番近い動物だよね。
5年ほど前に日本で環境問題をやっているトップクラスの先生を呼んで講演してもらったことがある。その人は環境庁の役人をやめた人。環境庁にいたら良い研究ができないって言って自分で研究所を作った人。
その人が言ってたけど、地球の環境問題は間に合わないかもしれないって。このままだと、こうなったら学者が研究しているのは人々がパニックをおこさないで、どうやってこれからを見守るか、という研究をするしかないって。
もう、手遅れになっているかもしれないって。すごい怖いよね。

でも、そこまで追い詰められてるかもしれないけど、人間が本当にやる気になれば変えられる、そのひとつの例が吉野川なんだ。

長野県は山の多い国で、ダムがいちばんどんどん作られたところ。日本でいちばんきれいなところだったんだけど、ダムができてメタメタになったっていうところ。
そこで田中知事が脱ダム宣言をした。子供達のために良い川を残そうって。そうしたら議会が知事の不信任を出してやめさせられた。でも長野県民がどうしたかというと、少々のお金よりも本当に大事なことは何かということで、田中知事を支持した。
そんな風にできたのも徳島で、やればできるんだってことが広がって行ったんだと思う。

だからそういう風に今からこれから、地球の環境とか川の将来が非常に厳しい中で、ほんのちょっとした勇気やほんのちょっとした知恵が大切。
君達が大きくなっていくときに、そういう知恵と勇気を見につけていってくれれば、これからどんどんどんどん良くなって行くかもしれない。そういうことで、この川の学校というのは君達が2回目の卒業生になるんやけれども3回目になったとき、次の子供たちを先輩として励ましてやって欲しいなと思います。 」

リンさんのお話

「昨日の野田さんの話とか、今日の姫野さんの話は本当に感動したよね。
みんなこの吉野川で、川海老食べたり、蟹食べたり、魚食べたりして、美味しかったよね。
こんな、美味しいものがいる川は、野田さんや姫野さんやリンさんが子供のころにはたくさんあったんだ。
僕は東京の多摩川で生まれて育ったんだけど、魚を釣って食べて美味しかった。
でも、大人になって気がついたら、もう多摩川はドブ川です。
みんな吉野川で美味しいもの食べたっていうことを、これはもう、しっかりみんな胸の底に持ってね、日本中の川がこういうふうに戻ってくれたらいいなと、美味しさを忘れないで、日本中の川がそういうふうに戻ってくれたらいいなと思います。」

このお話の後はいつものように落語が始まりました。みんなで大笑い!

こまさんのお話
(駒寄悟志さん リンさんの友人で釣りの名人)のお話

「リンさんに誘われて今日で2回目です。
吉野川は何度か来た事はあるんだけど、良い川だってこと再認識できたね。
それから釣りで、皆がえさを自分でちゃんとつけてちゃんと釣ってる、ちゃんとできてるなって、良かったと思います。
今思えば最初から来ていれば良かったなって後悔しています。
もし、校長先生が許してくれるなら、来年はやる回数おしかけようかな、と思っています。

さっき、姫野さんが川のことを言ったけど、僕からは釣りで吉野川に接して欲しいと言いたいです。釣りで接していたらここの中味がわかるだろうから。
今度はお父さんやお母さん、兄弟とかと来てください。川や、海でも良い、釣りをがんばってやってほしいなと思う。
テレビゲームだけでなくね。
土曜日の朝6時くらいからやってる釣りの番組とか、ああいうのを見て・・ブラックバスをやってるときは別にいいんだけど、それ以外のを見て、勉強してそしてきれいな川で釣りをしてほしい。
そういうのが皆さんに望むことかな。
あとは皆さん、卒業生として来れば、一緒に釣りができると思います。」


野田さんのお話

「釣りに関して、ちょっと話したいんだけど。
今、 ブラックバスというのが問題になっています。君たちも、もう字が読めるだろうから、ニューズウイークっていう週刊誌があるんだけど、それに、僕が出てます。よかったら 読んでごらん、ブラックバスについてちょっと話してます。

ブラックバス釣りっていうのは、日本では今、とてもいけない釣りになってて、ルアー釣りね、それがとってもダメなんで。えさ釣りで釣るっていうのを、みんな身につけて欲しい。ルアー釣りではなくてえさ釣り。ひとつはちょっとお金がかかりすぎるのね。ルアー釣りは。無駄が多すぎる。
えさ釣りで、できたら見釣りがいいな。見釣り。

こないだ、海に行ってね、海で見釣りやったんだ。深く潜ってね、沖の方出て、いっぱい釣れたよ。大きいの。海でやると面白いよ。リール竿でね。ライフジャケットひとつ持って、沖に出て、足、水につけて。面白かったよ。腰の袋に入れて持って帰って。そんなえさ釣りが良いね。

君達は吉野川の上から下まで見たと思うんだ。こんなに遊べる川はないんだ。徳島の人は自慢していいんだな、吉野川のことを。
北海道にも良い川はあるけど水が冷たい。こんな風に流れている川をまっすぐにしてしまったのね。
国土交通省っていうとっても悪いお役所があります。そいつらが第10堰作ろうって言って、姫野さんをはじめ、徳島の人がみんな反対して、やっつけたのね。勝ったのね。これは非常にめずらしい事なんで、自慢していいな。徳島の人は。
今一番そういう自然保護運動がうまく行っているのは徳島県です。

長野はまだまだ県知事が面白いけど県民が足りないね。勉強不足。
徳島は川に関してとても面白い県だと思います。
だから、少し、そういう自覚を持って吉野川に関する本とか読んでごらん。こういう川は日本にないんです。
昔、いっぱいあったんだけどね。昔って、20年前、30年前。僕が若い頃は日本中が吉野川みたいにきれいで、もっときれいだったかなぁー。それがなくなってしまった。
きれいな川は四万十川と仁淀川と北海道に一本、歴舟川・・それくらいかな?あとは汚い。ものすごく汚い。

カヌーの上から水中眼鏡でのぞいて魚がたくさん見えるだろ。
ああいう事、できないんだよ。他の川では。

県外の人は毎年夏になったら、吉野川に遊びにおいで。
それから、この川の学校はしばらく続けるんで、君達は卒業生だから来年から先輩として、いつでも遊びにおいで。そのかわりちょっと手伝ってもらうよ。いつでもおいで。
(「ただでもいいの?」「それは姫野さんと相談します。」)

いやいや、ほんと楽しかったな。
僕は川遊びを商売にしている人間だけども、今年の川の学校ほど面白かったことはない。
ほんと、6月、7月、8月、9月、10月・・みんな面白かったね。うまくいった。
君達はそういう運の良い人達だから、きっと良いことがあるよ。ホントにいつでも歓迎します。 そんなとこだな。」


夜話のあとは、みんなの得意なものを披露しました。
オカリナの演奏はしっとりとして、みんなしーんとして聞きました。
辰野さんに作ってもらった笛を吹いてくれた人もいました。

そして最後はリンさんの
「おわんだぜ、ちゃわんだぜ(“聖者の行進”のメロディーの替え歌)」の大合唱!


夜話が終わって、それぞれの時間を楽しみます。
片隅では、茶の湯のお話をしたり、お抹茶を点てる練習が始まりました。
大人も子供もみんな熱心に点ててみます。
   
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