第7回 「自転車のマナー」



 賀茂川と高野川が出合うあたりに、出町柳という場所がある。
合流した川はここより鴨川と名を改める。ここはちょうど叡山電鉄の駅でもあり又京阪電鉄の大阪行の起点になる為、ちいさいながらも往来には活気がある。
そのせいでもあろうか―周辺における無神経な自転車やバイクの不法駐車も目に余る。

 先日たまたま子供の帰りを待つ間そこで何とも凄まじい光景を目のあたりにした。
短く刈り上げたたくましい男があらわれると、商店街にあふれていた自転車を一台頭上に高々と掲げそして植込みのところへ放り投げだした。
その掲げ方はまさにリフトアップとでもいうべきで思わず見惚れる程であった。
投げ方で彼の怒りが尋常ではないことはひと目でわかった。一台、又一台と放り投げる様は…まさにちぎっては投げちぎっては投げると言うにふさわしく、眺めているうちにぼくはその男に出町のヘラクレスというニックネームを進呈したぐらいである。
 その場にあった自転車という自転車はおよそ十分の間にすべて山積みとなり、植木を埋めつくしてしまった。まあ…自転車の持ち主は迷惑だったろうが、一番の被害者(?)は植込みの植木だったに違いない…。

 ともあれ、ヘラクレス氏はそれを済ますと、ぐいぐいと汗をぬぐい、そして商店街の中へ立ち去っていった。
ヘラクレス氏のとった行動は決してほめられたものではない。けれどもきっと彼をそこまで駆り立てたであろう―プロセスがあったに違いない。
 歩道であれ車道であれ横断歩道であれ、近頃の自転車のマナーの悪さは目に余る。
ヘラクレス氏のみならず怒鳴りたくなることもある。

 くそ真面目に言うことではないが、最低限のマナーは大切だ。そしてそれがあるからこそ世の中には秩序がうまれるのである。
 それが守れないのであるならば…そろそろ自転車にも免許を!というべきかもしれない。


隣席の 汗の男を うとみみる(坊城 としあつ)


淡交タイムス 平成14年7月号掲載



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