|
第11回 「小さな営みから」
小さな営みから大きな世界の構造がみえた―という少し悲しいお話を…ひとつ…。
先月号にも書いた酵素風呂が‥実はその小さな営み、その場所なのである。
そこから何が見えたか―の前に、まず酵素風呂とは何ぞや!? という説明をしなければ話がうまくいかないだろう。
酵素風呂は簡単に言ってしまえば、おがくずにぬかや酵素を程よくブレンドしたモノを言う。
およそ十五分間この熱さに包まれる中で、内面からの免疫力や治癒力を高めるのである。
さて、何回か通ううちにその主宰者である先生が、突然ぼくに向かってとんでもないことを言われたことから話ははじまった。
それは、おがくずを購入していた製材所が廃業した為まもなくそれが手に入らなくなる…そうすると当然のこと乍らこの風呂も運営できなくなる‥ついては君のルートでおがくずが手に入らないか!?
ということであった。
何はともあれとても大事なことを突然託されたのだ。早速手配をした。
結果は、やっと探し回って京都に残る数少ない製材所でそれは確保出来ることになった。
酵素風呂の危機は当面救えたのである。けれども実際に回避出来ていない大きな危機がそこには残っていた。
それはすでに材木を扱う商売が世の中で成立していないという事実であった。
この危機はその業界の危機だけではなく、木造家屋の維持技術の衰退や伝統文化を伝承する空間、環境が再生しにくい程破壊が進行しているという事実なのである。
そうすると木や紙が作り上げてきた日本人の美しい暮らしは、これからどうなっていくのだろうか?
その中で培われてきた美しい言葉や表現、知恵は本当に継承できるのだろうか?といった疑問であった。
おがくず風呂という小さな世界から垣間見えた日本社会の構造は、実は相当危機管理を要する命題なのである。
淡交タイムス 平成14年11月号掲載
|