10 ベニス

 
"仮面"と聞いて、皆様はどんなことを思い浮かべられるでしょうか。  
人気のあるミュージカル「オペラ座の怪人」でしょうか。それとも?

 仮面と聞くと、何か実像とは異なる世界という感じがします。いい意味よりも悪いニュアンスで受け とめられてくれることも多いようです。
  私はベニスのカルネヴァーレ(謝肉祭・マスケラと呼ばれる仮面を付けた人々がベニスの街を埋め尽くす)をすぐに思います。

 水の都ベニスは、水の中に都市があるというだけで十分独特の魅力をかもしだしていますが、それに付け加えカルネヴァーレによって一層エキゾチックに見えます。 
この場合"仮面"はひととき現実から離れ、違う自分になれる効果
をもたらしてくれるようです。

 実は いけばなの世界にも"仮面"があるのです。

 というと勘違いされる方もいらっしゃるかもしれません。
"仮面"というより"化粧"といった方があっているかもしれませんね。いけばなというと生(なま)の花や枝を使うのが多いのですが、時として自分の意図を表現するために
植物に加工していかすことがあります。
 元の色を抜いて(脱色)、着色する場合がほとんどですが、生の色をそのまま使うのと、いったん脱色して、着色したのでは同じ花材であっても、与えるイメージは全く異なってきます。
 いける場合はその違いを十分考慮していかなくてはいけません。と同時に表現の幅も広がりいろいろな試みもできるわけです。

次期家元 池坊由紀
平成13年度 名古屋花展にて 

自由花
主材に脱色したしだれ桑を使用

 でも重要なことは、手を加えることによって、生の時よりもよい状態、つまりよい表現ができるようでなくては、それをする意味がなくなってしまうということです。ちょうど人が"仮面"をつけたことによって、異次元の空間にトリップできるように、花にもそうしなくてはいけないかどうか必要性を見極めて素ではかもし出せない世界をつくり出さなくてはいけないのです。

華道家元四十五世 池坊専永
平成13年度 名古屋花展にて

立花新風体
さるすべりの枝になんてんの美を銀着色したものを使用

 このごろは一般的に見て自己表現する場合(これはファッション行動等も含めてのことですが)、理由(なぜ、いまこうしなくてはいけないのか)というポリシーがないまま、周りの流行にながされてしまっているケースをよく見かけます。

 古来、日本人はとても美しい心映えを持っていた人たちだったはずなのに、いつしか恥ずかしいという気持ちもうせ、流行っているからというだけで自分の美意識やポリシーを曲げていることも多々あるのではないでしょうか。

 "仮面"をつけるときは、人も花も、そのことによって醜く見えるのではなく、
より美しく見えるようでありたいと願っています。
2001.10.8記載
由紀のひとしずく
●1ごあいさつ ●2花曇り ●3八十八夜 ●4水際 ●5川床
●6ビール ●7河童忌 ●8喜雨 ●9アイスクリーム ●10ベニス
●11台風 ●12旧七夕会 ●13新酒 ●14御事納め ●15柚湯
●16初づくし ●17風花 ●18ミネラルウォーター ●19樹氷 ●20・・・・
●21おぼろ月 ●22祝 和の学校
1st Birthday

●23・・・・
●24入道雲
●25雷雨

●26秋分

●27紅葉前線 ●28おもてなしの心 ●29年忘れ ●30初春
●31和の学校を改めて思う