由紀のひとしずく

31 和の学校を改めて思う

 暖かくなってホッとしたかと思うと急に寒さが戻ってきたり、まだまだ春とはいえない気候です。それでも庭の木蓮のつぼみが少しずつ大きくなり、枝の先につきさしておいた蜜柑に小鳥たちが集まり、ささやかな光景の中にも春の息吹がこぼれているようです。

 和の学校の伊住校長が亡くなられ、今でもほんの少し外出か出張されているようにしか思えないのですが・・・私は改めて初めてお会いしたころのことを思い出しています。ずっと内気で人付き合いの苦手だった私の背中をポンと押して下さり、そのお陰でいろいろな世界の方々を知ることができました。また、伝統文化とは床の間に飾って終わる、或いは本の中で終わってしまうものではなく、現代の暮らしに合い、現代人の心に宿り、生きづいてこそ初めて価値あるものであることを教えて下さったように思います。

 本来、日本人の美意識や和の精神といった日本の心そのものであり、そんな心がぐっと凝縮された形の伝統文化は、どうしてこんなに現代人から遠くなってしまったのでしょう。でも、私はいくら世の中が複雑化し、その結果手軽なものが流行ったり、また個人主義が尊重されるあまり日本の古くからの考えが仮に一瞬古めかしく時代錯誤のように写ったとしても、日本人が伝統文化に無関心になりどこかへ捨て去ってしまうとは到底思えません。むしろ、先の見えない不安で不透明な時代だからこそ伝統文化を知りたい、そこから何かを得たい、そして今に生かしたいという人は多いと思っています。文部科学省が学校の休みを利用して伝統文化教室を全国規模で開催するのも、そういった需要に応え、かつ文化の理解者である将来の日本人をつくっていく一つの方針だと思います。

潜在的な興味は持っていても時間的、経済的問題や、今の暮らしとは一見離れて見える伝統文化という世界に対するためらい、とまどい。そういう不安を沢山かかえ一歩を踏み出せない現代人に対し、和の学校の私たちがそのためらう背中にポンと優しく押してあげることはできないのでしょうか。ちょうど伊住さんがそうして下さったように。

 これからも和の学校が継続し、そしてそこに集う和文化の初心者も熟練者も互いに手助けして、大きな文化の豊かな世界で遊んでいる、そんな様子を願います。中から見た世界と、外から見た世界は意外と違うものです。伝統文化に生きる人にとっては当たり前のことでも、その当たり前が違う世界の人にとっては不安の種だったりするのかもしれません。学校は先生と生徒の交流の場でもあります。そしてそこから更に良い知恵も生まれてきます。どうぞこれからもいろいろなご意見をお聞かせ下さい。そして和の学校を日本の和であり、思いやりの和であり、人の和であり、そんな学校にしていきましょう。

2003.3.6記載


由紀のひとしずく
●1ごあいさつ ●2花曇り ●3八十八夜 ●4水際 ●5川床
●6ビール ●7河童忌 ●8喜雨 ●9アイスクリーム ●10ベニス
●11台風 ●12旧七夕会 ●13新酒 ●14御事納め ●15柚湯
●16初づくし ●17風花 ●18ミネラルウォーター ●19樹氷 ●20・・・・
●21おぼろ月 ●22祝 和の学校
1st Birthday

●23・・・・
●24入道雲
●25雷雨

●26秋分

●27紅葉前線 ●28おもてなしの心 ●29年忘れ ●30初春
●31和の学校を改めて思う