9 アイスクリーム

 幼い頃の私は、アイスクリームが大好きでした。

 けれども、そのメロンシャーベットよりも好きなものがありました。それは父が作ってくれたアイスクリームです。玉子と、牛乳と、砂糖と、ほんの少しのバニラエッセンスと、そして何が入っていたので
ょうか。

  円形の容器の中で羽根のようなものがくるくる回り、時間が経つと固まるといったような具合だったと思います。できあがりを楽しく待つと共にその過程も十分に興味深いものでした。

「父池坊専永と共に」
 その素朴なそして甘い香りが漂うと、私の心は幸福感で一杯になったのを今でも覚えています。  「モノより思い出」というCMがありましたが、今の時代、周りにあふれんばかりのモノがあっても、こうして懐かしく思い起こせるものが減ったような気がします。目に見えるもの、形として残るものばかりに価値の比重が移ってしまったのでしょうか。

 そして、文化の世界にもそのような波が押し寄せているようです。
  ・礼節を重んじる心
  ・古きの中に先人の教えを学び、新しきを生み出そうとする力
  ・師を敬いそして弟子を慈しむ心  
  どれも目に見えないものです。


「インドの古いミルクポットを
花器に見たてて」

 けれども、目に見えないものが実は長い間にわたって、日本の伝統文化を守り育み伝えてきたのです。目に見えない心と力が人と人とを結び、さらに大きな世界が創り出してきたのです。

 今は、大抵それらのものは、古めかしいとか厳しくて難しいとかあるいは面倒だと思われがちです。でもそれは、それだけではないことを示し伝えていくのが、文化の世界に身を置くものの役目のひとつでしょう。

 長い年月と共に、あのアイスクリームの機械もいつしか消えてしまいました。  でもあの時の満ち足りた思いは、今も心に強く刻まれています。そして、そんな思いをいけばなを通して、多くの人に味わって頂けるように頑張っていきたいと思うのです。


由紀のひとしずく
●1ごあいさつ ●2花曇り ●3八十八夜 ●4水際 ●5川床
●6ビール ●7河童忌 ●8喜雨 ●9アイスクリーム ●10ベニス
●11台風 ●12旧七夕会 ●13新酒 ●14御事納め ●15柚湯
●16初づくし ●17風花 ●18ミネラルウォーター ●19樹氷 ●20・・・・
●21おぼろ月 ●22祝 和の学校
1st Birthday

●23・・・・
●24入道雲
●25雷雨

●26秋分

●27紅葉前線 ●28おもてなしの心 ●29年忘れ ●30初春
●31和の学校を改めて思う