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雪の白さを
十一月も二十日をすぎると、盆地の京都では、時雨がよくみられるようになる。西山から北山の山並みのほうへ雲が低く垂れこめてきて、雨が、そう長いあいだではなく、さっと降って路面をわずかに濡らしてゆく。
やがて十二月に入ると、北山にかかる雲はより低く重くなってゆく。寒さもひときわという日に、鴨川にかかる丸太町橋もしくは加茂大橋にたたずんで、北山の峰々に眼ををやると、鈍色の暈繝のようになっている。もう風花が舞っているのである。
水墨画の世界と記したいところだが、雪が舞っていると淡墨色の重なりだけではなくて、そのなかに胡粉の白の絵具をまき散らしたような色の立体感を感じるのである。
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京の街にも初雪が舞うのももうすぐである。
根雪になるということはなくて、わずか淡い浮きの景色を楽しむという風情である。
紅葉も枝に三枚二枚と残すだけで散ってしまって、色のない世界となっていく。
だが、いにしえの王朝の人びとは、こうしたときにも色を想いそれを衣裳に表現したようである。
「初雪の襲」、あるいは「氷の襲」が物語の中に見られる。
初雪は白の透明な正絹を上に、下にほのかな紅を置くとある。氷の襲は、白い絹ばかりを何枚も重ねたのである。
『源氏物語』の中で、光源氏が明石の上を京へ呼び寄せて嵐山の邸にひとまず住まわせ、雪の降る日に逢瀬に向かう場面がある。「薄雲」の帖である。
その中で雪霰がちな日に、明石の上は汀の氷を見ながら「白き衣どものなよよかなるあまた着て」とある。
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「初雪の襲」
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ここでは、「なよよか」とあるから、絹を練ってやわらかくした白い絹を数枚重ね着して温かくしている姿が表現されている。
雪の白やかぜの氷の透明なものは、千も万もの色を感じさせるのである。
■NHK人間講座、2001年12月〜2002年1月をご覧ください。
「日本人の創った色」吉岡 幸雄
教育テレビ 水曜日 午後11時〜11時30分
再放送 月曜日 午後 3時30分〜4時
再々放送 翌月土曜日 午前2時15分〜2時45分
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