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絵と文 熊倉功夫
22 ―葉っぱの食卓―
チベッタンティー
ネパールの首都カトマンズは、秋祭りが終わって静けさを取り戻したところでした。もっとも町の喧噪はあいかわらず。クラクションが鳴り響き、オートバイや三輪のタクシーはもうもうと黒煙をはきつづけて走りまわっているのは変わりありません。
それでも道端の土の中に丸くなって寝ている犬の表情には、なんともいえぬ静謐さがただよっています。
カトマンズの東部の町ボートナートは、ネパールでも最大級のストゥーパのある町で、塔にのぼってみますと、若者たちが半円球中のストゥーパの上から石灰を溶かした水を流していました。真っ白なストゥーパ始終石灰でお色直しをしているわけです。
このボートナートの町には、たくさんのチベット人が住んでいて、そのうちの一軒ラワさんの家にいきました。実はチベット茶の実演をみせてもらうのが目的です。
ラワさんのお宅はジュータン工場で、裏では盛んにジュータンをつくっていました。さてチベット茶のつくりかたですが、これがとても珍しい。まず独特の道具、チャイドン(これはドンモともいいます)が必要です。長さが一.二メートルくらい。直径は十八センチくらいです。口や胴に金属製のタガがはめられていて全体は木製の筒です。中には筒の内径に合わせた円板のついた棒が入ります。円盤には四隅に切れ込みがいれてあって、中で液体が攪拌できるようになっています。
さていよいよお茶づくり。まずお鍋に湯をわかして、その中に団茶をくずしていれます。そこで“団茶”とは何か。ごく簡単に説明しますと、お茶の葉を弁当箱くらいの大きさに固めたものと、思って下さい。中国の四川省あたりでつくり、中央アジアやチベットで使われ、中国人は飲みません。ちなみにラワさんの使っている団茶は、チベットから運ばれてきたものだそうです。この団茶を煮出す湯にちょっと不思議な白い粉―何か正体不明―を加えてグラグラ煮ます。最後に岩塩を加えて味を調えます。
お茶がわく間に、チャイドンの中に大量のバターをいれる。これはヤクの乳からつくったバターで、独特のにおいがありまして、大さじ三〜四杯を一・五リットルくらいのお茶に使います。筒の上からわいた鍋のお茶をそそぎいれますが、このとき茶こしを通します。これがなかなかの力仕事。熱い茶とバターがよく混ざるように、さきほどの棒を筒の中で上下させ、だいたい五十回ぐらい攪拌します。やってくれたお母さん(お茶づくりは母親の仕事です)も汗いっぱい。ご苦労さまでした。
できたお茶はポットへ移してからカップへ。塩味がきついお茶味のバタースープ。
日本に最初に入ったお茶もこんなものでした。
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