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〜膝元〜
「座るときに膝元への意識を持たない人が多いようだが、なぜなのであろうか」という疑問を持ちはじめてからずいぶん長い月日が流れている。
先日電車に乗った際、満員電車の中で足を前に出し、しかも足と足との幅を最大限にまで開いて座っている男子学生の姿が目に飛び込んできた。杖をついたお年寄りがそばに立たれようとも、気づかぬ振りをして目を伏せ続けている。長身で、かつ恰幅の良い少年に対して、周囲の大人は私を含めて誰一人としてそれを注意する勇気がないままにいたが、とうとうお見かけしたところ50代くらいのご婦人が席を譲ろうと席を立たれたのであった。
「少年があと少しだけ足をひき、姿勢を正して座るようにするだけで、おみ足の不自由なおばあちゃまだけでなく、あのご婦人も立たれずに済んだであろうに…」と周囲の方も思ったに違いない。
こうした光景はこの男子学生に限らず、あらゆるシーンで見かけることであるし、また若い人々に限ったことではなく、年齢層にも幅がある。その中で、どうしても気にかかるのは、若い女性が決して美しいとは言いがたい姿勢で座っている姿を度々、見かけることである。
最近の流行としてはスカート丈の長さが幾分、長めになってはいるものの、それでも短い丈やスリットが深く入ったスカートをはいている人も少なくない。しかしながら、彼女達の膝元への意識はないためなのだろうか、明らかに、膝との間には大きな空間がある。晴れた日に比べて雨の日はまだ良い。それはぬれた傘を膝の間に立てかけるために、隙間を埋めることができるからである。
中・高生を中心とする若い世代の女性にはもう一つ、共通することがあるように思う。それは足の置き方なのであるが、膝の開いた女性達は足元が「ハの字」になっていることが多い。言いかえるのであれば、内股である。歩いている時、または立ち止まっている時、足元が内股になっているのはなぜだろうか。
そこで私は講義の際、何人かの学生に「なぜ内股で歩くの?」と問いかけたところ、「エーッ、わかんないー!」との声に混じり、「なんとなく可愛いからかな?」という答えが返ってきたのには驚かされた。女子高生の多くが短いスカートにルーズソックスで足元にボリュームを持たせるという、幼児的スタイルに身を包むようになって久しい。ハの字の足元もこうした「いつまでもカワイクありたい」という幼児化傾向のひとつなのであろうか。
こうした疑問や驚きを持つ中で、数日前、一際目を引く女性の姿に出会うことができた。 十代後半と見うけられたその女性は、セーターにパンツ姿というラフな服装ではあるものの、清潔感があり、凛とした姿勢を保ち、膝元をつけて座っていた。何よりも光っていたのは、その姿が自然であったことである。
高級なものや流行ものを身につけることに重きが置かれがちな現代において、本当の美しさとは何か、を改めて教えられたことに、こころから感謝した一時であった。
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