〜贈答〜  

 この時期、デパートに行くとたくさんの人でにぎわっている。先日も午前中だというのにデパートの駐車場はどこも満車になっていたくらいだった。このにぎわいの理由としてもちろん女性なら「Sale」を思い浮かべられるであろうが、もう一つ忘れてはならないことは「お中元」。この贈答の習慣に疑問の声を多々耳にするが、私はこころを表現するには絶好のチャンスだと思っている。

   鎌倉時代にまで歴史をさかのぼると、8月1日に八朔の贈答という習慣があったことがわかる。これを「田の実の節供」ともいって五節供に次ぐ嘉日として大切にされていた。この日は早稲の実をかわらけ(うわぐすりをかけずに焼いた素焼きの土器)に入れ、それを協力し合った農民たちがつまみ合って収穫を祝ったのである。

 この習慣は、農民からさらには武士達にも伝わっていった。特に主従関係が不安定であった室町時代からは贈り物も太刀、あるいは馬などが用いられるようになったようである。 こうなると「田の実」ではなく「頼み合う」または「憑の節供」となっていった。

 江戸時代には徳川家康の江戸入城の日がこの八月朔日だったこともあって特に大事な日として扱われたのである。

 またこの頃は盂蘭盆の時期とも重なる。お盆というと亡くなった祖先の霊を種々の供物を供えて冥福を祈るというような理解が一般的になっているようだが、その他に存命中の両親に対する贈答や饗応するイキミタマと呼ばれるものもお中元に何らかの影響があると考えられる。

 少々、説明が長くなってしまったのだが、つまり「お中元」一つとっても贈答は形式ばかりを重んずるものではなく、その背景には様々な理由があることを是非この機会にご理解いただければと思う。

 相手の趣向に合わせて一つ一つ吟味されて選ばれる品々は、直接伺って差し上げるとさらにこころを伝えることができるのだが、それが難しい場合は宅配などによって送ることが多くなっている。つまり、宅配を用いることは略式となるわけなので品物のみを贈るのではなく、御礼の意を含んだ挨拶状を別にお送りする、またはそれも難しい場合は品物と一緒にカードを添える心遣いは忘れないで頂きたい。

 もしも直接お宅に伺う場合は、紙袋のままではなく風呂敷に包むとよい。ただし風呂敷ごと差し上げないように、また取り回しをして相手に品物の正面を向けて差し上げるゆとりを持つことが大切である。この時に用いる風呂敷だが、こうした季節のご挨拶に用いるのなら、季節に合わせてご自分の好きな柄などを集めておくことも楽しみにつながるかもしれない。

 今ではデパートなどの包装紙で包まれることが当たり前のようになっているが、昔は一つ一つ、自らの手によりそれぞれの品物にあわせて包むものだった。現代でもこうしたこころを受け継ぎ、包みに工夫をする、あるいは品物に季節の花を一輪添えるなど、真のこころの贈答をなさってみてはいかがであろうか。  
 

2001.7.23記載

stylish礼法
1 ブーツ 2 ネイルサロン 3 膝元 4 女性らしさ 5 贈答
6 素足 7 言葉遣い 8 煙草 9 Eメール 10 コート

11 言葉遣い(2)

12 携帯電話 13 入学式 14 感謝のことば 15 もてなし
16 謝罪のことば 17 化粧室  18 パンのいただき方 19 箸遣い 20 お正月を迎えて