連続テレビ小説「おのり」
今回の講座に参加した皆さんの中には
中川さんのユーモアたっぷりのこの言葉が印象に残っている方もおられるのではないでしょうか。
大学を卒業後、
出版社勤務を経て家業の銘木屋に入った中川さん。
男性中心であった世界では
修行先を見つけるのにも市場に出るのにも
それぞれに並々ならぬ困難な道のりがありました。
ドラマのヒロインがいつも前向きに
人生を切り開いていくように
中川さんご自身も周囲の棟梁や職人さんに
育てられながら今日に至るそうです。
生きた材料である木材を扱う仕事にとって
この「育てる」ということが
重要なキーワードになっていると思いました。
木は山から切り出してすぐ使えるものではありません。
乾燥や仕上げの加工などの養生期間を経て
初めて銘木として新たな生命を与えられるのです。
木を育てて世に出す(配る)ことは
「気を配る」作業であり、
木を使うことは
「気を使う」ことでもあると中川さんは言われていました。
中川さんが京都新聞に連載されていた
「木林(きりん)学ことはじめ」の最終回には、
人生を導くための5本の「心の樹」があるということも書かれています。
その樹とは中川さんのお祖父様が伝えた
「やる気、根気、負けん気」の3本に、
10代目酢屋嘉兵衛である中川さんのお母様が
「勇気、元気」を付け加えた5本のことです。
 |
|
酢屋で販売されている
犬のおもちゃ。
小さい子供でも
安心して遊べるように
角は全て丸く削られています。
|
また木目や木の肌を見定めて製材するということが
日本独自の美意識であるという話も印象的でした。
日本人は昔から木目の美しさを
最大限に引き出す方法を考えながら木を使ってきました。
樹木の生きた証明でもある
木の年輪や木肌を尊重するからこその繊細な文化だと私は思います。
木のいのちを大切にすることは、
それを使う人間のいのちや生活を大切にすることにもつながります。
現代の法律では
新しく町家が建築することができず、
最近の住宅事情では
和室や床の間のない家も増えてきました。
床の間やお茶室がない家が増えてきたとは言っても、
人々の関心が全くなくなったというわけではありません。
床の間や本物の銘木を使った家に対する
憧れがある人たちも多いそうです。
そういった時代背景にあわせて、
イス席でも可能な和室のしつらえを考えたり、
食器やアクセサリーなど身近なもので
木のぬくもりを感じる製品を作りだすのも
中川さんの取り組みの一つです。
(酢屋では実際にお碗や箸置きやおもちゃなど
様々な木工品が販売されています)
ご自身の仕事を
「木を知っていただく入り口」と
説明されていた中川さんの今回の講座では、
銘木が私たちの目に触れるまでに過ごしてきた養生の期間と、
その木を育てる人間の姿を通して、
本来自然の一部である
私たち人間がそれぞれのこころや暮らしと
丁寧に向き合うことを教えていただきました。
文化とはいつの時代もそうやって育てられてきたものであり、
目に見えるものとして生み出されるまでに
注がれてきた人の思いや
時間の流れを感じることなのだと思います。
中川典子さんの連載
「木林学ことはじめ」
http://www.kyoto-np.co.jp/info/education/kirin_mae/index.html
「木林学のススメ」
http://www.kyoto-np.co.jp/info/education/kirinngaku/070604.html
酢屋&千本銘木のホームページ
http://kyoto-suya.co.jp/