和の学校の最初の講師派遣となったのは、神奈川県愛甲郡愛川町にある愛川中原中学校です。

和の学校が紹介された記事を見た愛川中原中学校の当時の教頭先生からご連絡があり、「生徒に本物を見せたい」というご依頼があり、その後担当の先生と何度かやりとりをして、当日を迎えました。



【講演内容】

平成16年(2004年)11月12日、愛川中原中学校で第一回目の和の学校講師派遣事業が開催されました。

講師は、狂言師の茂山あきらさんとご子息の童司さんです。


全校生徒360名、教職員約30名、保護者約20名が観る中、最初に、狂言の歴史などについてのお話があり、そのあと生徒も参加してのワークショップが行われました。


◆ 狂言とは ◆

狂言という言葉を聞いたことがあるかな?新聞やテレビなどで言われるその言葉はあまり良い意味では使われていませんね。

狂言強盗、狂言自殺・・・そう。「狂言〇〇」というのは「ウソの強盗」「ウソの自殺」という意味で使われています。「ウソ」とは、つまり「おしばい」という意味。
狂言とは「おしばいの」という意味なんです。

日本のお芝居はいろいろとあります。

300年から350年前に出来た「歌舞伎」。また同じ時代に出来た「文楽」。
そして、今から650年から700年前に出来たのが「能」や「能楽」と言われているものがあります。
歌や音楽に合わせてお芝居をするものです。
それと同時期に生まれたものが、今日皆さんに観ていただく「狂言」です。

では、最も基本的な演技をひとつお目にかけましょう。
後ほど、皆さんにも同じことをやっていただきたいと思っています。
そうすると心からわかると思います。

(笑いの演技)

どうですか?今のが「笑い」です。

普通に話すにはマイクを使っていますが、今のはマイクを使っていません。すごく声がでかいですね。
狂言は大きい大きい大きい声でやらなくてはならない。
もっと昔にはこんなマイクなんてなかったんですから、今みたいに大きな声を出さなくてはならなかったんですね。

今、私は狂言風に笑いましたが、笑っているように見えたでしょう?
でも、私はおかしくて笑ったわけではなく、笑う「演技」をしたんです。
つまり「笑う形」をする。おかしくなくても笑っているように見える。
役者さんはその演技ができる・・・それが実は 「古典芸能」なんです。

古典芸能は日本にもたくさんあると言いましたが、世界的に見てもたくさんの古典芸能があります。
それぞれの民族がそれぞれの芸能を古くから持っています。

たとえばお隣の韓国では仮面劇などもあるし、中国にも昔からのお芝居がある。あるいはインドネシアは影絵のお芝居、ヨーロッパでもオペラや宗教的なお芝居がある。それがおじいさんやおばあさんから孫、ひ孫と伝わって今の形になっているのです。

さて、君達は日本に生まれたわけですから、日本の古いものから、文化から、 あなたたちの考え方が出来上がっています。

だから、古いものを知るということは、自分のルーツを知るということになります。
自分がどういう人か、どこから来たのか、どこに住んでいるのか、どんなことを考えているのか・・・そんな、元々の材料になっているのが文化なんです。

文化と言っても、お芝居だけではなく、例えば食べるものもそうです。
関西と関東では味が違う。普通関西は薄味で、関東は味が濃いと言われていますね。・・・これも文化です
それぞれ自分の土地に根ざした「文化」というものが、それぞれあるのです。

さて、狂言は非常に古いお芝居です。あとでお目にかけますが、今観ても、すぐにわかります。筋書きがすごーく簡単なんです。
だいたい、ひとつの物語にひとつの事柄しか起きません。

それから狂言は昔の言葉を使っています。今は使っていない言葉も出てきます。
でも、お芝居ですから前後のお話や身振り手振りでわかると思います。

 
◆ ワークショップ ◆


茂山さんのお話の次はいよいよワークショップです。
生徒も参加して、狂言を体で感じてもらいます。

狂言というのは、他の演劇と違っていろいろな特徴があります。
さ、僕と一緒に舞台の上でやってみたいという人、いる?先着10名様!

茂山さんが問い掛けると「えー?」と笑い声やざわざわ。誰も出てこないか・・・とあきらめかけた時、一人の男子生徒が手を挙げました。
二年生のO君です。まず登場してきたO君に全員から拍手。

さっそく狂言の笑い方の大・中・小を二人で演じました。
O君、なかなか上手で、みんなも拍手喝采です。

彼は上手いね〜。僕スカウトして帰ろうかしら。

彼の良いところは、もちろん声も良いんだけど、ものおじしないところが良い!

人前に出たらものおじしてしまうよね。

これって日本人の美徳のように言われているけれど、やはり人前に出たら自分の意見をはっきりと言わなければならない。

ましてや、彼は自分で手を挙げて出てきた。とても素晴らしいことです。

皆さんも人の前で「はい!やります!」と発表するとき、ものおじせずに「やる」と言った以上はちゃんとやらなくちゃならない。

古典芸能というのは、形の組み合わせなんです。何十通りも何百通りもプロは知っていてそれを組み合わせて狂言や歌舞伎のお芝居が出来上がっている。
その形を「笑う」という形を、彼はひとつ出来たわけです。

次は歩き方の練習です。

につく、っていう言葉があるよね。すり足で舞台にするように歩く。これが出来たら一人前だと言われています。
そうなると「板についてきた」というわけです。

普通に歩くと重心が上下します。動きが安定しない。

だから、日常の動きではなく、重心を下げて腰を入れて・・・これは日本の動きの基本です。お芝居だけでなく、茶道などの日本の文化には使われる動きです。

そして、 和服の時にはかっこよく見えます。

O君、これも上手にでき、茂山さんからお褒めの言葉をいただきました。

その後、全員で笑う練習をしました。最初は笑い声だけの練習。それから顔の動作をつけてやってみます。恥ずかしくて、最初はあまり大きな声は出ないようでしたが、それでもだんだんと声が出て、一生懸命やっていました。




◆ 狂言「盆山(ぼんさん)」 ◆

次に実際に狂言を観てもらいました。
演目は「盆山(ぼんさん)」。あきらさんが盗人、童司さんが主人の役です。

〜あらすじ〜

盗人が以前から顔見知りの屋敷の中に入って盆栽を盗み出そうとします。
大きな屋敷。
盗人は、縄を切ったり、垣をめくったり、塀を飛び越えたりして侵入します。

盗人が盆栽を物色しているところに、その家の主人が帰ってきます。

主人はすぐにその盗人が誰かを見破るのですが、物陰に隠れた盗人をからかってやろうと
「あれは犬かな?」「いや猿だな。」と言い、そのたびに盗人が犬や猿の鳴き声を真似ます。

最後に「いや、あれは鯛じゃ。」と言われ困った盗人が「タイ!」と鳴きます。

それで正体がばれてしまい、主人に追いかけられて逃げ回る盗人・・・

というお話です。

言葉は難しかったようですが、内容は理解できたようで、みんな笑いながら観ていました。



狂言が終わってから、茂山あきらさん、童司さんが舞台に出てこられ,少しお話しをされました。

私たち二人並んでおりますが、実は親子です。
こんなふうに古い歴史を持ったおうちというのは、親から子へ伝えていくことが多いのです。



私のお父さんも、おじいさんも、ひいおじいさんも、そのまた前のおじいさんも、みいんな狂言役者です。私の息子の子どもも・・・まだいませんが・・・狂言役者になるかもしれない。

こんなふうに代々つながっていっているのです。


そのあとは質疑応答がありました。

「狂言をやっていて、楽しかったり嬉しかったりすることは何ですか」

はり観てくださっている皆さまが、たくさん笑ってくれたり感動してくれたりすることが一番嬉しいことです。これは、狂言だけでなく、どの役者さんも芸人さんも同じだと思います。

「狂言の衣装について教えてください」

洋服は同じような色を組み合わせたりするでしょう?
着物の柄は洋服と違って反対色の組み合わせを使うことが多いです。


最後に生徒代表からお礼のことばがあり、無事終了しました。


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